【前田幸長 直球勝負】ソフトバンクのドラフト1位ルーキー・田中正義(22=創価大)が9日、フリー打撃に初登板した。40球を投げて安打性の当たりは4本。制球を乱すシーンも見られた一方で、空振りを4つ奪い、バットを2本へし折る投球を見せた。本紙評論家の前田幸長氏が期待のルーキーの現状を分析した。

 田中は大器の片鱗を見せてくれた。評判の直球は球威十分でバットを押し込めていた。空振りも取れていたし、ファウルも取れていた。

 実戦映えするタイプだろう。先日、ブルペンで見たときは正直バラバラだったが、打者が立った今回のほうが、いい球がいっていたように思う。あとは、今日投げていない変化球でどれだけストライクを取れるか。そこを次は見てみたいと思った。

 一つ気になったのは右打者に対する投球だ。最初に対戦した左打者・上林には良かったが、次の右打者・塚田が立つと(23球中10球がボールと)明らかに変わった。肩付近にあわや死球というボールもあった。味方打者に“当ててはいけない”“抜けてはいけない”というプレッシャーがあったのだろうが、引っ掛かるボールが多かった。

 言うまでもないが、高いポテンシャルを持った投手であることは間違いない。田中が大学3年のときに、プロから7連続三振を奪った投球を映像で見たが、素晴らしい球を投げていた。ただ、現状については本人も決して満足していないとも聞く。本人からすれば、あのときの球を投げられていないという感覚なのではないだろうか。

 ソフトバンクは12球団ナンバーワンの先発陣の頭数を誇る。昨季の勝ち星順に挙げても和田、武田、千賀、東浜、バンデンハーク、中田がいて、これに加えて実績のある摂津、大隣、松坂もいる。若手にも期待できる投手が目白押しだ。

 いくら田中がゴールデンルーキーだといっても、激しい競争抜きにローテ確約とまではいかないだろう。ここにどう割って入っていくか。今は早く実戦で投げる姿を見てみたい。今後も注目したい投手であるのは間違いない。