【キャンプ話題の人を直撃!】日本ハム・大谷翔平投手(22)のWBC登録抹消により、侍ジャパンのエースとして、巨人・菅野智之投手(27)への期待が高まっている。そんな右腕は現在、新球チェンジアップの習得に励んでいるのだが、気になる“魔球”の精度はいかに。1月からハワイでの自主トレで菅野と寝食を共にし、菅野の魔球への取り組みを最もよく知るオリックス・西勇輝投手(26)に、その現状を明かしてもらった。

 ――ハワイでは菅野のチェンジアップ習得に尽力したと言われている。実際に菅野の新球をどう見たか

 西 十分公式戦やWBCでも通用する球だとは思います。ただ、菅野さんのチェンジアップは難易度が高い。僕のよりもはるかに習得が難しいですから。まだ完璧とは言えませんね。

 ――「難易度が高い」とは具体的に?

 西 チェンジアップって大きく分けて2種類ある。一つは2つの縫い目に指をかけるツーシーム。これは落差や変化が大きい分、スピードが遅くなり打者に球種がわかりやすい。こっちの方は習得が比較的簡単なんです。でも、菅野さんが投げようとしているのは指をボールの4つの縫い目にかけるフォーシームのチェンジアップ。これは腕の振りが直球とほぼ同じで、スピードも落ちないから打者は打ちにくい。ただその分、フォームを安定させたり、腕の振りの細かい調整とかが必要なので。試合で投げれるようになるまでには時間がかかるんです。

 ――習得にはどのぐらいの時間が必要なのか

 西 人にもよりますが、1、2か月ぐらいでは絶対にマスターできません。僕も以前、フォーシームチェンジアップに挑戦しましたが結局、習得できませんでした(苦笑)。今、日本球界でフォーシームのチェンジアップを自由に操れるのは金子(千尋)さん(オリックス)ぐらいですから。

 ――昨年末から習得を試みている菅野の場合、WBCには間に合わない

 西 普通に考えればそうでしょう。でも、菅野さんはこのオフから習得を始めたわけではないみたい。以前からいろいろな人に話を聞いて、それをまとめて昨年から本格的にやり始めたようです。そう考えればWBCまでに使える域に達する可能性はあります。ただ…。

 ――何か?

 西 本人は100%のチェンジアップを追求しているわけではないと思います。『菅野にはチェンジアップがある』というイメージを相手に植え付けるためというか。実際にハワイで菅野さんの球を受け続けてきましたが、完成度から言えばまだ70~80%ぐらい。でも、手応えはつかんでいる感じでした。ハワイ合宿の最後の方のチェンジアップにはフォーシームチェンジアップ独特の奥行きが出てましたしね。

 ――「独特の奥行き」とは

 西「腕の振りを見て150キロの直球が来る、と思ってバットを出そうとしたら、実際は130キロぐらいの球だった」という打席から見た感覚です。僕のチェンジアップは初めからわかりますが、菅野さんのは最後までわからない。WBCで投げたら、外国人選手はきっと対応に苦労すると思いますよ。僕が打席に入って、何度もチェックしたら、もうだいぶそうなっていましたから。まだ多少浮いたりバラツキはありますけど、今後もっと練習すればすごいボールになると思います。

 ――では、菅野が「大谷ショック」を吹き飛ばし、WBCで大活躍する可能性も…

 西 その可能性は高いですし、大谷が投げない以上、そうなってもらわないと日本は厳しいでしょう。WBC本番まであと2か月ぐらい。それまでにどれぐらいチェンジアップの精度を高められるか。菅野さんには頑張ってほしいですね。