第89回選抜高校野球大会(3月19日から12日間、甲子園)で東西の怪物スラッガーとして注目されているのが早実(東京)の清宮幸太郎内野手(2年)と履正社(大阪)の安田尚憲内野手(2年)。いずれも超高校級だけにプロスカウト陣も密着マークしているが、現時点での2人の評価はいかに。

 ともに左の大砲で通算78本塁打の一塁手・清宮と通算45本塁打の三塁手・安田。東西の強打者についてのプロスカウトの評価はやはり高い。「2人とも高校生離れしているのは確か。センバツではいろいろな球種への対応が見もの。普通の高校生なら直球一本に狙いを絞りながら打席に立っているケースが多いものだが、この2人は直球だろうと、変化球だろうと、どちらにでもしっかり対応した打撃ができていると思う。そういうレベルの高い野球が見られるのが楽しみ」と楽天の早川チーム統括本部副会長補佐は話した。では、現時点でプロのスカウトたちは清宮と安田のどちらを上とみているのか。これには意見が分かれた。

 中日・中田スカウト部長は「素材的には清宮、安田ともに甲乙つけがたい」と前置きしながら「現段階で(ドラフト会議で)いの一番でいけるのかといえば、まだ安田は様子を見てみないといけない」と話す。僅差で清宮ということだが「打者として一番大事な好球必打ができている。ボール球には手を出さないし、打ち損ないが非常に少ない。甘い球は見逃すことなく、打てる球を確実に捉えられる」「周囲の期待に応えるべく、ある程度の数字を残せるのは天性、経験の両方が兼ね備わっていると思う。ナゴヤドームで30発打てる素材。打撃を見た印象では中田(日本ハム)以来の衝撃を受けた」などと絶賛の嵐。184センチ、100キロの巨体もあって範囲が狭いとされる一塁守備についても「言われるほど悪くはない。フットワークや肩を見ていると三塁ぐらいならできそう。(プロ入りしても)最終的には助っ人外国人並みに打ちさえすれば、チームによっては一塁でもいいかもしれない」とまで言い切った。

 逆に楽天の早川副会長補佐は安田をプッシュし「高校時代の筒香(DeNA)みたいな感じ。走力や守備は平均以上で清宮を上回っているし、打撃でも安田の方が今後の伸びしろがあると思う。個人的には安田の方が魅力的に見える。2人とも(高卒で)プロ入りしたとして実戦デビューを早く果たせるのは安田の方だと思う」。中日の米村スカウトも「安田は確実性に欠けるところがある。速い変化球に対応できるようにもっと下半身を使ってスイングができるようになれればいい」と弱点を指摘しつつ「(履正社のグラウンドで)ライトの防球ネットを越えていく打球なんかはT―岡田(履正社→オリックス)以来に見た。それほどパワーは桁外れなものを持っている」と評した。

 ただし、中日・中田スカウト部長はこうも付け加えた。「そもそも2人はタイプが違う。清宮は、どちらかといえば柔軟さを兼ね備えたアベレージヒッターでヒットの延長線で角度さえ上がればホームランになる感じ。清宮はアベレージあってのホームラン打者だけど安田は完全なパワーヒッター。体があるし、打率は多少低くてもいいから少々のボール球でも遠くへ飛ばす、ホームランアーチストになってほしい選手」

 清宮と安田のライバル物語。2人は今春、甲子園でどんな姿を見せるのか。プロスカウトの評価はこの先、どう変わっていくのか。昨秋の神宮大会決勝では履正社が11―6で早実を下して優勝。その試合では清宮、安田ともに本塁打を放ったが、もしも聖地で再び両校激突となれば、さらに注目が集まるのは間違いない。


★逸材ズラリ=今春センバツには清宮と安田以外にも逸材野手が多い。早実で4番を務める野村大樹内野手(1年)は、右にも左にも飛ばせるパワフルな打撃が魅力で清宮にも負けていない。日大三(東京)の主砲・金成麗生(かなり・れお)内野手(2年)は193センチ、101キロの大型左打者。米国人の父を持つハーフで愛称は「デカプリオ」。今後、さらに人気も出そうだ。ほかにも智弁学園(奈良)の福元悠真外野手(2年)、仙台育英(宮城)の西巻賢二内野手(2年)、履正社・若林将平外野手(2年)、宇部鴻城(山口)の嶋谷将平内野手(2年)らがいる。

 投手も好素材が目白押しだ。MAX147キロ右腕の東海大市原望洋(千葉)金久保優斗(2年)、MAX149キロ右腕の熊本工(熊本)山口翔(2年)はプロ注目。福岡大大濠(福岡)の右腕・三浦銀二(2年)、仙台育英の左腕・長谷川拓帆(2年)、履正社の右腕・竹田祐(2年)も評判がいい。大阪桐蔭(大阪)の根尾昂(あきら=1年)は投手としても野手としても高いレベルの選手だ。