ソフトバンクのドラフト1位・田中正義投手(22=創価大)は楽しみな逸材だ。190センチ近い長身から繰り出される速球には、相手を制圧する威力が十分に込められている。軽く投げて140キロ後半、勝負どころと見て力を入れれば簡単に150キロ台は計測されるだろう。恵まれた体格と力強いフォームを見る限り、田中のポテンシャルはすごい。

 スライダー、フォーク、チェンジアップ、それにカーブ。これら多彩な球種を投げられる万能さに加え、そのどれもがウイニングショットとしてハマりそうなほどに全ての精度が高い。それでいて「大卒ルーキー」という観点から考察すると、個人的には楽天・則本昂大のようなタイプであると見ている。気持ちを前面に出しながらその勢いで押していく投球スタイルは、まさに鷹版の則本だ。

 前評判通りの実力を問題なく発揮すれば、おそらく12~13勝は勝てるし、新人王も手にできると予想する。しかし「1年間ローテをしっかりと守りきった場合」という注釈も付けておきたい。

 そこで一つ引っかかってくるのが、高校生の時から古傷を抱えていると指摘されている右肩だ。実際に16年春にも右肩痛を再発させており、そこから秋まで投げられなかった点には首脳陣も目を光らせているだろう。だからコンディショニングチェックに対して人一倍厳しい工藤監督は、右肩を含め田中の状態が「おかしい」と感じたら即座にローテから外して回復に専念させるはず。他の先発候補がゾロゾロいるホークスだからこそ、そういう起用法ができるというわけだ。

 しかしそれが仮に長期戦線離脱につながってしまったら、いくらゴールデンルーキーの田中でもローテの座は保証されない。そういう意味でも100%のコンディションづくりを常に意識することを心がけてほしい。特に17年初参加となる春季キャンプは、周囲を意識するあまりについ飛ばしがちになるが、オーバーワークで身を削ってしまっては元も子もない。

 目標とリミットの順守を意識し、自分を見失わないようにすることがルーキーイヤーの鉄則である。頭脳派ともっぱらの田中ならば、きっとそれを理解できるに違いない。(本紙評論家)