巨人には、29日もDeNAから国内FA権を行使した山口俊投手(29)からの連絡は来なかった。FA交渉解禁日の11日に即アタックした際の手応えは上々で、山口本人は由伸監督のラブコールに「前向きに考えさせていただきます」と返答。巨人入りは時間の問題と思われていた。

 ところが、気付けば初交渉から3週間近くが経過。その間に中日の参戦が表面化し、楽勝ムードが一変。この日も右腕は「退団」を表明しただけで、事態に大きな変化はなし。むしろ、山口がDeNA側と最後の残留交渉を行ったと明かしたことに、巨人内では「まだ残る気があったのか」と驚きの声が上がったほどだった。

 山口の煮え切らない態度には、巨人側もさすがに気をもんでいる。右腕の退団表明を受け、東京都内の球団事務所で対応した堤GMは「連絡は来ていないし、待っているだけですよ」と苦笑交じりにコメント。決断の時期については「ここまできたら、ゆっくり考えてもらっていいんじゃないか」としたが、焦りがないわけではない。

 獲得への自信は揺るがないが、球団内から「中日は一体、どんな材料を持っているのか。条件では負けていないはずだが…」(フロント)との声が漏れるなど、ライバルの動きは無視できず、不気味さを感じているのも事実だ。

 巨人か、それとも中日か――。悩める右腕の決断に球界内外の関心が高まるなか、山口の恩師の一人であるDeNA前監督の中畑清氏の発言も注目を集めている。古巣巨人が山口獲りに動いている話を向けられると、当然といった様子で「俊か? もう決まりだろ、巨人で」と即答しているのだ。

 中畑氏が断言した通り、山口は巨人を選ぶのか。右腕の決断が待たれる。