オリックスからFA宣言した糸井嘉男外野手(35)の阪神入団が21日、決定。11日の入団交渉で「初めての恋人や」と熱烈ラブコールを送った金本知憲監督(48)は、糸井の決断に胸をなで下ろすとともに早速、打率3割以上、30本塁打以上、30盗塁以上のトリプルスリーを要求。フロントも球団史上初の偉業達成に向けて後押しする構えだ。

「何より大きかったのは金本監督の熱意に心を打たれたこと。監督を男にできるよう全力プレーでトップを目指したい」とコメントした糸井。待ち望んでいた“恋人”の決断に金本監督はご機嫌だった。吉報は兵庫・西宮市内でのゴルフコンペのラウンド中に届いたといい「ある程度の感触は感じていたが、最後の返事を聞くまでは落ち着かない部分があったのでよかった」とにっこり。糸井のタテジマ姿を思い浮かべながら「甲子園球場が似合いそうな選手。中心となって引っ張っていってほしい。遠慮する必要はない。思うように暴れたらいい」と声を大にした。

 ただし、要求も高いのが鉄人流だ。来年36歳ながら「体は当時の俺より若い。躍動感があって、足もあって長打力もある」と評価する糸井に求めるのは球団史上初のトリプルスリー。広島時代の2000年に達成したことがある指揮官は「(糸井は)トリプルスリーの可能性は十二分に持っている。あとホームランだけ。甲子園は左バッターにとって厳しいと思うが、センター方向は(打球が)伸びるし、十分にチャンスはある。狙えるものは狙ってほしい」ときっぱり。今季は「超変革」のもと若虎を積極起用してきただけに、FAで糸井を獲得することへの異論もある中、そんな声を封じる活躍を見せてほしいというわけだ。

 糸井のトリプルスリー達成を望んでいるのは指揮官だけではない。四藤球団社長は「浜風があって左打者が本塁打を打つのは難しいといわれるのが甲子園球場。そこでトリプルスリーを達成できれば、球団の歴史に名を残す快挙。レジェンドたちに肩を並べることになる。球団としてできる限りのことをやっていきたい」とバックアップを約束した。すでに球団は藤浪以来となる専属広報も検討。左ヒザの不安も解消すべくトレーナー陣も特別シフトを組んでの対処が内定しているなど、糸井が安心してプレーできるよう、あの手この手の策を講じるという。

 自身も03年に広島から阪神にFA移籍し、優勝に導いた金本監督は「俺も来たときは一人で10試合くらい決勝打や逆転打を打とうと思っていた。今年もこれがつながっていればという試合が多かったので、そういうところで打ってほしい」と年間10本の決勝打&逆転打のノルマまで設定。虎の糸井への期待は早くも高まるばかりだ。