WBCメキシコ代表にも“トランプショック”

2016年11月11日 16時30分

本紙記者の直撃に胸中を明かすロモ(右)

 来春に第4回WBCを控える野球日本代表・侍ジャパンが東京ドームで行われた強化試合・メキシコ戦に3―7で逆転負け。しかし相手は野球どころではなかったのかもしれない。メキシコに敵意を向けるドナルド・トランプ氏(70)が米大統領選挙で勝利を収めたからで、メジャーでも名リリーバーとして知られるセルジオ・ロモ投手(33=SFジャイアンツからFA)が本紙の独占直撃に応じ“トランプショック”に揺れる胸中を明かした。

 

 ヒスパニックの血を引くメジャーリーガー・ロモは、今季限りでジャイアンツとの2年契約が切れ、FAとなった。米テレビ局「CBSスポーツ」において「今オフ、有力なフリーエージェントのバーゲン選手」として特集された企画では、ジャスティン・マスターソンに次いで2位に。現在、来季の所属先は未定のままだ。

 

 そんな不安定な状況にもかかわらず、今回の日本行きを自ら熱望し、メキシコ代表に加わったのは来春の第4回WBCでもナショナルチームの一員として暴れ回ろうと決意する“愛国心”が強いからこそ。メキシコ国籍の両親は移民で米カリフォルニア州ブローリーへ移住し、米永住権を取得している。ロモは同地で生まれたことから、出生と同時に米国籍を持つ米国民だが、自らが純血のヒスパニックであることを強く意識しており、2013年の第3回WBCでは両国代表側からオファーを受けたものの米国代表ではなくメキシコ代表入りを選んでいる。

 

 その米国籍を持つ“メヒカーノ”であるロモが今、最も気にかけている話題が米国大統領選挙の結果だった。当初は泡沫候補と目されながらも共和党候補にのし上がり、世紀の大番狂わせで民主党候補のヒラリー・クリントン氏を打ち負かした。「野球とは関係ない質問だが…米国大統領選挙について、どう思うか?」と問いかけると、それまで柔和だった表情は一変。厳しい顔つきになってこう述べた。

 

「大統領選挙の結果はクレージーなものだったね…。トランプが勝ったのは驚きだった」

 

 トランプ氏はロモのようなヒスパニック系米国人やロモの両親を含むヒスパニック系移民、ひいてはメキシコ国民にとっても「厄介な人物」であることは間違いない。これまで同氏は大統領選でもプロパガンダのごとく「メキシコ不法移民は米国に薬物や犯罪を持ち込み、その中にはレイプ犯もいる」「米国南部のメキシコとの国境に万里の長城を築く」「国境に作る壁の費用はメキシコ政府に払わせる」などと発言し、メキシコから流入する移民をけん制。「メキシコ=悪」の印象を米国内に植え付けた。

 

 実際、トランプ氏が大統領選挙に勝利すると、メキシコの通貨であるペソが米ドルに対して大きく売られ、20年ぶりに急落。トランプ氏はNAFTA(北米自由貿易協定)からの離脱も示唆しており、これによってメキシコ経済界も大きな打撃を受けるともっぱらだ。

 

 しかもロモの両親はもちろん「不法な移民」ではないが、米国内においては決して立場の強くないマイノリティー(少数派)。移民政策に一切の妥協をしない方針を示すトランプ氏には今後どんな強行案を断行するのか読めないところもある。

 

 だからこそ、ロモは本紙に「彼(トランプ)をまったく支持していなかった。だからこそ驚きだったんだよ」とも言い切った。

 

 関係者によれば「ロモだけでなく、今回来日したメキシコ代表の面々は誰もが大統領選挙の結果をずっと気にしていた。そしてトランプ大統領の誕生をニュースで知ると、大半の代表メンバーが落胆していましたよ」という。

 

 それでもロモはため息を交えながらも、最後は努めて前向きにこう語った。

 

「でも…。同時に今後の米国は約束されている。トランプは我々(ヒスパニック系の米国民や移民)にもいい機会を与えるべきだとね。僕はそう思う。米国はトランプが主張するように今後も世界で強くあり続けるべきだと思う。もちろん、次の米国がどうなるかが楽しみなことは確かだよ」

 

 果たしてロモの“メヒカーノの叫び”はトランプ氏に届くのだろうか。