日本シリーズは23日、マツダスタジアムで第2戦が行われ、セ・リーグ覇者の広島がパ・リーグ覇者の日本ハムに5―1で快勝し、2連勝を飾った。25日の第3戦は舞台を札幌ドームに移すが、このまま広島が日本一に向かって突き進むのか、それとも日本ハムが本拠地で巻き返すのか。ここまでの両軍の戦いを見て、本紙専属評論家の大下剛史氏は日本ハムの問題点を鋭く指摘した。

【大下剛史「熱血球論」】力が違う。広島と日本ハムの2戦を見て、そう痛感した。投手陣の質や量や走れる野手など広島の方が日本ハムより充実しているとは思っていたが、問題はもっと別のところにある。広島には隙がない。日本ハムは隙だらけだ。

 象徴的なプレーが第2戦の2回、広島が小窪の二塁打で先制した場面。一死一塁で一走はエルドレッド。普通ならば、一塁手はけん制に備えベースについて構えていなければいけない。しかし、一塁手の中田はベースから離れ、打者の正面に向いて一、二塁間を守っていた。小窪はおそらく走者を進めるために右におっつけてくる。走者はエルドレッドだから走ってこない。そうした考えだったのだろう。しかし、広島ベンチはこの隙を突き、フルカウントからエルドレッドにスタートを切らせた。相手はノーマークでリードも大きく取れる。悠々と走ることができた。小窪の右中間を破る二塁打でエルドレッドがホームに生還したが、彼の足ならば、もしもスタートを切っていなければ三塁でストップだっただろう。そうなれば次は8番・石原、9番・野村の下位打線。得点が入っていない可能性が高い。日本ハムの油断が招いた結果だった。おそらく日本ハムベンチも「しまった」と思ったはずだ。ビッグゲームではちょっとしたミス、ちょっとした隙を見せた方が負ける。

 6回の遊撃手・中島のプレーも理解ができない。6回無死二塁で打席には菊池。ここで広島ベンチはバスターで勝ち越し点を奪った。このときの菊池の打球は通常の守備位置ならば遊ゴロ。ところが中島はバントと決めつけて、走者をけん制するために二塁ベース方向に向かい、逆を突かれ打球が左前に抜けた。菊池があの場面で簡単に送るわけがない。そこを決めつけたのが大きなミスだし、そもそも走者を引きつけるために、なぜあの守備隊形を敷いたのかもわからない。

 栗山監督はこれまで緻密なチームを作ってきた。今回ほど穴の多い日本ハムの野球は見たことがない。振り返ってみれば今年のパ・リーグのペナントレースはソフトバンクが楽勝で優勝だろうと思われていた。しかし、日本ハムが大逆転で優勝。クライマックスシリーズも制して日本シリーズに進出した。「やれやれ」と気持ちが緩んだところがあったのかもしれない。

 一方の広島は日本シリーズ直前に黒田が引退を表明。そしてホームのマツダスタジアムからスタートと緊張感を持ってシリーズに入った。第1戦で2安打を放った左打者の安部に代えて起用した選手会長の小窪が先制打を放つなどベンチワークも当たっている。

 日本ハムの栗山監督もこのまま黙ってはいないだろう。どんな手を使うのか楽しみでもある。ただ修正するのはかなり難しい。点差以上に打ちのめされている。それぐらい悪い。唯一の望みは札幌ドームでDH出場する大谷。こういう言葉は好きではないが「大谷頼み」になるのではないか。チーム状態が良くないときは打線はつながらない。劇的に変わるとしたら大谷の一発だろう。(本紙専属評論家)