プロ野球のドラフト会議が20日、都内のホテルで行われ、注目の156キロ右腕・田中正義投手(22=創価大)は5球団競合の末、ソフトバンクが交渉権を獲得した。巨人は痛恨のくじ引き連敗。田中を外し、さらに外れ1位の指名でも、佐々木千隼投手(22=桜美林大)をロッテにさらわれた。結局、吉川尚輝内野手(21=中京学院大)の交渉権を獲得したが、現場は“即戦力投手”を渇望していただけに…。今後の補強戦略への影響は小さくなさそうだ。

 正々堂々と勝負に挑んだものの、結果は厳しいものとなった。田中を射止めたのは、事前に指名を公表していなかったソフトバンク。くじ引き役を務めた堤GMは、工藤監督がガッツポーズするのを横目に、サバサバした表情で壇上から降りた。

 むしろ誤算だったのは、外れ1位指名まで、異例の5球団競合となったことだ。1度目の指名で有力候補がばらけて続々と消えた結果、2度目の指名は、当初“ナンバー2評価”ともっぱらだった佐々木に1位を外した全5球団が集中。またもくじ引きに敗れると、堤GMは首をかしげ、やや表情を曇らせた。

 ここで巨人は方針を転換。野手の吉川を指名し、やっと交渉権獲得にこぎつけた。高橋由伸監督は「スカウトの評価は野手ではナンバーワン。坂本以降、(内野は)レギュラーが出ていない。力のある野手が獲れたので、レギュラーとして頑張れる選手になってもらいたい」と期待したが、笑顔は見られなかった。

 吉川のスカウト評は「走攻守と高いレベルが揃い、遊撃手としてだけでなく、二塁手としても楽しみな選手。50メートル5秒7の脚力も魅力」。ただ、現場に足りないのは、野手ならば、スラッガー候補。二遊間に限れば昨年も山本を獲得しており、今オフは同じルーキーの重信も二塁コンバートに挑戦を始めたところだ。いかに評価が高いとはいえ、吉川が「どうしても必要な選手」だったのかは疑問が残る。

 田中と佐々木を指名したように、巨人の最優先テーマは投手陣の拡充だった。3度目で野手指名に切り替えたのは「投手、野手含めて順位付けしていた」(堤GM)からという。野手を1位指名した結果、2~7位は6人すべて投手指名となった。

 ドラフト全体を振り返り、堤GMは「当初の見込みと、くじは外しましたけれども、1巡目評価の野手を獲れたので、あとは投手でと。(指名順位の)上の方は即戦力系、下の方は育成系と考えていたので、とりあえずそういう感じでいけた」と淡々と語った。

 一方、ドラフト初出席の由伸監督は「正直言うと、ほとんど私自身が見ていないわけですから。こちらの現場の意見は伝えてありますし、ずっと見てきた方の意見がある。総合したなかで、こうした形になった」とした。

 吉川の加入が、ただちにチーム力の向上につながるとは考えにくい。当初の狙いだった田中、佐々木の“大学ビッグ2”を逃し、即戦力投手で獲れたのは2位・畠(近大)、3位・谷岡(東芝)、4位・池田(ヤマハ)の3人。この中から“救世主”が現れない限り、来季も苦戦は避けられない。

 最後に採点を求められた堤GMは「(くじを)2回外しているので満点じゃないですが、合格点」と苦笑交じりに語ったが…。今回のドラフトの結果が、FA、外国人補強にどう影響するか今後注目される。