【伊勢孝夫「新IDアナライザー」】パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦が14日、札幌ドームで行われ、リーグ覇者の日本ハムが2位・ソフトバンクに4―1で勝利。対戦成績を3勝1敗(アドバンテージを含む)として日本シリーズ進出に王手をかけた。初回に近藤の適時打とレアードの3ランで4点を先制し、先発・有原ら4投手のリレーで日本ハムが逃げ切った。勝負のポイントを本紙評論家の伊勢孝夫氏が解析した。

 短期決戦は1球でガラッと展開が変わるから難しい。長いペナントレースならば取り返すチャンスもあるが、それも難しいのがつらいところ。そんな思いを痛感した試合だ。

 ソフトバンクの千賀はパ・リーグでも5本の指に入る投手だろう。真っすぐは150キロを超え、フォークのキレも抜群。セ・リーグにこんな投手はいない。それだけに初回の4失点はもったいなかった。

 一死二塁から大谷をフォークで空振り三振。このボールを細川が後ろにそらし、振り逃げで一死一、三塁とピンチが広がった。次の中田が三振だから普通にやっていれば0点で終わっている。あれは細川が捕ってやらないといかん。ボールを捕る前に尻が上がっていた。

 1点を失って二死一、二塁からレアードに3ラン。結局、この4点で試合が決まってしまった。この時の配球に合点がいかない。細川はカウント1―1からフォークを4球連続で要求。そして4球目を左翼席に運ばれた。打たれたから言うわけではない。あそこはどこかで1球内角に真っすぐを挟むべきだった。

 同じ球種を続けることが悪いわけではない。例えば西武時代の伊東勤(現ロッテ監督)のリードがそうだった。初球に内角にシュート。内角のシュートと外角のスライダーはセットだから大概は次の球は外にスライダーが多い。ストライクのシュートならば、もう1つシュートもあるが、ボール球ならばまず続けることはない。ところが伊東はボール球のシュートの後にもう1つシュート。さらにもう1つ投げさせた。打者は体の近くに来る球は嫌なもの。恐怖心がある。予想していなければもっと嫌だろう。

 細川も第2戦で3球連続で内角にシュートの配球を見せていた。西武で伊東の下で勉強して似てきたなと思っていた。ただフォークを4球続けるのはどうか。千賀に対して「追い込まれたらフォーク」の意識が打者にはある。続けることでよりタイミングも合ってくる。ノムさん(野村克也氏)なら「根拠はなんや!」と言うだろうな。外国人だから続けるのか、フォークが苦手だから続けるのか。どちらでもないだろう。実際、第2打席のレアードには内角に真っすぐ2球を効かせ、三振に抑えている。打たれてからでは遅い。あの場面、ヒットなら傷口も小さくて済んだ。千賀にとってみたら泣いても泣ききれん。

 ベテランだからといってマスクをかぶらせるのは考えものだ。経験があるからこそ大事な試合だと分かる。そうすると安全策に走ってしまうこともある。初回のレアードへの配球は完全に裏目だった。

 この3試合を見ているとソフトバンクのバッテリーが大谷をマークしすぎているとも感じた。二刀流を意識しすぎている。第2戦では大谷を敬遠して中田と勝負してタイムリーを浴びた。大谷と中田、バッターとしてどちらをマークするかといえば中田だと思う。大谷は二刀流だが、中田は打者一本。中田にしてみれば大谷との勝負を避けられるのは屈辱的だろう。そうした気持ちに火をつけるべきではない。(本紙評論家)