【赤坂英一「赤ペン!!」】最後まで盛り上がったセのCSファーストステージ。敗れた巨人で最も存在感を発揮したのは坂本だ。第1、2戦の本塁打。第2戦でピンチをしのいだ好守。敗退した第3戦でも延長11回に今年最後のヒットを打ち、せめてもの意地を見せた。坂本にとっては、「巨人史上最強のショート」という評価を決定的にしたCSと言ってもいいだろう。

 坂本は今季、打率3割4分4厘をマーク、セのショートとしては初めて首位打者となった。それ以前に、巨人でショートがクリーンアップに定着し、キャプテンとなってチームを引っ張ったのも坂本が初めてである。

 坂本の前にショートのレギュラーだった二岡現二軍打撃コーチは主将を務めるほどの存在ではなく、その前の川相現三軍監督は2番で犠打の職人に徹した。さらに前の時代の河埜は主砲・原の、黒江、広岡はONの陰に隠れた脇役だった。攻守にわたって中心選手となった遊撃手は、坂本以前はいなかったのだ。

 もっとも「坂本史上最強遊撃手論」に異論を唱える評論家や巨人OBも少なくない。よく指摘される最大の欠点は、何といってもエラーの多さだ。坂本はレギュラーに定着した2008年から今年まで毎年2桁失策を記録しており、その9シーズン中6シーズンがリーグ最多。2桁失策は二岡が現役15年間で2度、川相が24年間で2度だから、坂本だけが突出して多いのである。

 12年オフの自主トレでは、坂本自らヤクルトのショートだった宮本に「守備を教えてください」と“弟子入り”。それでも失策数は大して減っておらず「巨人の選手として恥ずかしくないのか」とオールドファンのひんしゅくを買った。

 しかし、エラーが多いから守備が下手なのかというと、必ずしもそうではない。川相三軍監督は長年じっくり坂本を観察し「坂本は重要な試合や大事な場面になればなるほど、いつも以上に丁寧でしっかりと守るようになる」と指摘している。それなら、いつも「大事な場面」で守る気でいればいいのに、と思うのは私だけではあるまい。

 第3戦終了後「最後は紙一重の差で負けたと思う。来年は、やられたぶんやり返せるように頑張ります」と話していた坂本。その「紙一重の差」をクリアするためにも、来年はまずエラーの数を1桁に減らしてもらいたい。