パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)が8日に開幕する。ロッテを本拠地ヤフオクドームで迎え撃つソフトバンクは、完全な“3位独り旅”だった相手を異常警戒。不安を抱えたまま短期決戦に突入する。一方、ロッテはあの“問題児助っ人”が下克上へのキーマンに浮上してきた。

 工藤監督が決戦を前に緊張感を漂わせた。早ければ2戦で決着する超短期決戦。共同会見では「失うものは何もない。ぶつかっていくだけ」と強調したロッテ・伊東監督に対して、逆転日本一を義務付けられた指揮官として「監督2年目ですが、このステージで戦うのは初めて。日本シリーズと変わらないくらい緊張してます」と思いを口にした。

 実際、何が起こるか分からない。シーズンでは16勝8敗1分けと好相性だったが、上位とも下位とも離れた“3位独り旅”だったロッテは不気味との声もある。チームスタッフは「うちと日本ハムが最後までギリギリの戦いをしたのに対して、ロッテは早々にCSに照準を合わせられた。嫌な感じはする。2014年もオリックスは(3位の)ハムに負けたし、うちにしても神がかっていた大隣が(初戦、最終戦と)中4日で2回投げて勝てたけど…」と話す。

 2年前はオリックスと今季同様にシーズン最後までデッドヒートとなったが、その際もファーストステージを勝ち抜いたのはシーズン中盤から単独3位だった日本ハムだ。ソフトバンクは1勝のアドバンテージがあり3勝3敗で辛うじて日本シリーズに進出した。

 振り返ればロッテに3位からの下克上を決められたのも、4位までが終盤まで僅差だったとはいえ、2位・西武とシーズン最後まで死闘を繰り広げた2010年。「失うものがない3位の怖さもある」(球団関係者)

 その10年以降、パは6年連続でファーストステージは3位が勝っているという不吉なデータもある。工藤監督は「頑張って上がれるようにします」とチームの3年連続日本一へ、まずはジンクス打破を目指す。

 一方、ロッテのヤマイコ・ナバーロ内野手(28)がCSファーストステージ突破に燃えている。7日はヤフオクドームで行われた全体練習に参加。打撃だけでなく、ノックを受けるなど守備練習も精力的にこなした。ナバーロは「ここ2日の練習で調子はとてもいい。集中して試合に向かう準備ができている」と自信を見せた。

 一時は打撃不振と度重なる怠慢プレーで二軍落ちを経験した上、CS構想外の危機に陥った。それが伊東勤監督(54)から「爆発するなら“新外国人”バナーロ(ナバーロ)。練習でもシーズンと違ってやりそうな雰囲気が出てた。集中力も(CSの間は)持つと思う」と生まれ変わった姿を評価され、キーマンに指名されるまで信頼を回復した。

 ここまで変わった理由は「ロッテ愛」だ。ナバーロは来季について「まだわからない」と前置きしながらも「ロッテが大好きだからね。チームメートもすばらしいし、タフな野球をする。そう(残留)ならいいと思っているよ」と話す。

 球団サイドには「能力があるのはわかっている。まだ完全に日本に慣れていないことも考慮したい」という声もあるが、現場サイドは必ずしも同じ意見ではない。伊東監督はシーズン中にことあるごとに怠慢プレーを注意してきたし、チーム関係者は「打撃不振はしょうがないけど、二軍に落ちる前のナバーロの練習態度、試合中のプレーはあまりにひどかったからね」と声を潜めていたほどだ。

 くしくも昨年までロッテにいた巨人のルイス・クルーズ内野手(32)がCS直前の3日に登録抹消された。“サボり癖”や怠慢プレーが原因と見られており、行動に問題のある助っ人には風当たりが強くなっている。そんな“前科”のあるナバーロだけに、CSで大活躍して球団の評価も一新したいところだ。