ソフトバンクが緊急事態に襲われた。23日の西武戦(西武プリンス)に8―0で快勝し、首位の日本ハムに再び1ゲーム差と迫ったが、同日、ハーラー単独トップの15勝を挙げるなどMVP級の働きをしていた和田毅投手(35)が、左ヒジ痛のため出場選手登録を抹消されたのだ。病院の検査では目立った所見はなかったというが、時期が時期だけに「重症説」も指摘されている。

 本拠地ヤフオクドームで日本ハムに2連敗。マジック6の点灯を許したホークスを再び激震が襲った。

 それが和田の出場選手登録の抹消だ。

 西武戦前に都内の病院で診察を受け、大きな異常はなかったというが、不安はぬぐえなかった。試合前練習に少し遅れて合流し、汗を流したベテラン左腕は「不安な状態で自分の最高のパフォーマンスができない。大丈夫かなと思いながら投げてもチームにとってよくない」と説明。「自分にとっても悔しいし、苦しい。思い切って違和感なく腕が振れる状態になるまで、我慢しようと決断しました」と、悩み抜いた末の判断だった。

 エースを失った工藤監督は「多少の痛み、違和感がある状態。ここまで先頭で頑張ってもらった。ほかのみんなでカバーするしかない」。CSでの登板について、和田は「見切り発車で戻りたくない。今年投げて、来年、再来年投げられませんというのが一番やってはいけないこと」と慎重な姿勢だった。

 ただ、大きな異常はなく、多少の違和感ということなら、CSでは投げられるのではないか。だが、本紙評論家の遠藤一彦氏は「優勝争いで1敗もできない状況の中、多少の違和感なら無理してでも投げてしまうところ。自分の体のことは本人しかわからないが、この時期にきて自分から申し出るというのは、よほど我慢できない痛みだったのでは」と“重症説”を指摘した。

 和田の口から「CSに間に合わせる」との言葉が出なかったのも、状態が楽観できないことの表れではないかというのだ。

 何より責任感が強い和田が、自身がペナントレースの一番大事な時期に戦列を離れることの、チームへの悪影響に思いが巡らないわけはない。それでも「投げられない」と決断せざるを得なかったほどの痛みだったのだろう。

 そもそも和田の左ヒジは、オリオールズ時代の2012年にメスを入れた古傷。手術後はフルシーズン通して投げた経験はなく、今季のフル回転により、ヒジの状態は常に心配されていた。また、仮にCS、日本シリーズに間に合わせたとしても「自分も故障明けはどうしても、あそこをかばったり、ここをかばったりとかでフォームが微妙に崩れてしまった。万全の状態に戻るのは時間がかかるかもしれない」(遠藤氏)と、古傷という場所が場所だけに、不安は尽きないという。

 残り7試合、和田は「やれることがあればやりたい。歓喜の輪にもいたいし、悔しい思いも一緒にしたい。最後まで見届けて苦楽を共にしたい」とチームに同行し続けるというが、果たして穴は埋まるのか。

 和田が本来、予定していた24日の西武戦は中田が中4日で登板し、25日はバンデンハークが投げる予定。26日からのロッテ3連戦の初戦は摂津が見込まれている。その後は「普通に考えたら(21、22日に投げた)千賀、武田が行くと思う」(首脳陣)。さらにはこの日投げた東浜、そして10月2日の最終戦は再びバンデンハークと見られる。