巨人のエースが乗り切れない。22日の中日戦(東京ドーム)は、1点を追う9回二死一塁からギャレット・ジョーンズ外野手(35)の23号逆転サヨナラ2ランが飛び出し、4―3で連勝を飾った。助っ人砲の活躍でチームは2位確保へ前進。ただ心配なのは、8回3失点でまたも2桁勝利を逃した菅野智之投手(26)だ。奮闘が報われないまま、シーズンは幕を閉じようとしている。

 重苦しい空気を大砲の一撃が振り払った。2―3の9回二死一塁。打席には前日4打点で、この日も2点先制打を放っていたギャレット。助っ人は中日・田島からバックスクリーン左へ来日初のサヨナラ弾を放ち、連日のヒーローとなった。

 由伸監督は「後がないというところで素晴らしいバッティングをしてくれた」とギャレットを手放しで絶賛。一方で「こういう勝ちもうれしいが、もう少し理想の展開があったのかな」と語ったように、不安なのはまたも10勝目を逃した菅野だ。

 序盤は文句の付けようのないデキだったが、5回に先頭のエルナンデスから3連打で瞬く間に同点。6回にも大島、荒木の連打で勝ち越しを許し、8回3失点で降板した。入団以来、4年連続の2桁勝利はまたもお預け。「チームが勝ったことがすべて。いまさら2桁とか言っていられる状況じゃない。もっと早く勝っておけば自分も楽になっていたんでしょうけれど、変に意識すればチームに影響する」と語ったが、曇った表情が今の複雑な心境を物語る。

 煮え切らないシーズンが終わりに近付くにつれ、思い返されるのは、厳しい評価に泣いた昨オフの契約更改交渉だ。昨季の菅野は10勝11敗、防御率1・91という成績を残した。投手としての指標は抜群に優秀ながら、「大事な試合で勝てない」と評価された。主にマイナスポイントに挙げられたのは勝負の8、9月に2勝5敗と負け越し、優勝したヤクルトに4戦全敗だった点。難交渉の末、2000万円増の1億3000万円(推定)でサインした菅野は「成長する姿を見せたい」と唇をかんで誓っていた。

 ただ、今季も無援護に泣かされる状況は変わらず、防御率はリーグトップの1・97ながら勝利数はなかなか伸びない。優勝した広島には4戦1勝2敗。8月24日の広島戦(東京ドーム)では7回5失点でマジック点灯を許し、その日が事実上の終戦となった。つまり、見方によっては昨季と数字や状況がさほど変わっていないとも取れるのだ。

 肩身の狭い野手陣は「智之が球界トップクラスの投手なのは誰もが認めているし、勝ち星が伸びなかったのは、僕らが打てなかっただけ。今年こそはドカンと上がっていい」と援護射撃するが、今の状況では再び交渉が荒れるのは避けられそうもない。

「負けない投手になってもらわないといけない」と由伸監督からハッパをかけられた菅野は「短期決戦も始まるし、これからは内容よりも結果がすべて」と危機感を募らせたが…。シーズン登板は次回がラスト。ポストシーズン、そしてオフの“決戦”に弾みをつけるために、最後はうっぷんを晴らす快投で締められるか。