巨人のクローザー澤村拓一投手(28)がまたも、エースの白星を消した。14日の中日戦は菅野智之投手(26)が自身10勝目をかけて7回1失点と奮投。打線の援護もあって9回を2点リードで迎えたが、頼みの守護神が1安打3四死球の大乱調で2失点。試合を振り出しに戻してしまった。意気消沈のチームは結局、延長11回4―5でサヨナラ負け。背信続きの背番号15へ向けられる視線は日増しに厳しくなっている。

 今季の巨人で何度繰り返された光景か。楽勝ムードが一転、ベンチの視線がみるみる険しくなっていく。9回のマウンドを任された澤村が先頭のエルナンデスに四球を与えると、右翼スタンドからは歓声が上がり、左翼スタンドがざわめき始めた。

 動揺の見える右腕は続く森野に中前打を許し、福田にも四球を与えて無死満塁。一死後、ビシエドには最悪の押し出し死球。阿部に土壇場で同点となる犠飛を許すと、ベンチ内は沈黙し、G党からは悲鳴が上がった。

 逃げ切り想定でメンバーを入れ替えていた打線に、再度突き放す力は残っていない。延長11回、5番手・田原誠が二死満塁で大島にフェンス直撃のサヨナラ打を浴び、4時間37分の長い試合が終わった。

 四球から崩れる悪癖をのぞかせた澤村について、由伸監督は「それが痛いというか、反省しないといけないところ」と奮起を促しつつ、「それで1年間ずっとやってきたわけですから」と配置転換については否定した。

 11連戦初戦から5投手をつぎ込んで敗れる大誤算。今季最多の139球を投げた菅野の10勝目がかかった大事な一戦でもあった。澤村はエースの勝ちを4月に2度、連続で消している。試合後はぼうぜんと「申し訳ない。それしかない。智之のときに(失敗は)3度目なので、申し訳ない気持ちでいっぱい。力がないというのが現実です」と語った。

 今季は開幕から抑えを任され、ここまで4勝3敗、リーグトップの37セーブ。防御率2.61と数字上は見栄えのいい成績を残している。だが、印象は最悪だ。エースの登板試合も大事だが、それ以上に重要な節目で今季は2度やらかしている。

 8月7日、広島に2連勝して迎えたマツダでの第3戦。勝てば3・5差に接近という大一番では、9回1点リードの二死無走者から同点弾↓四球↓二塁打で、まさかの逆転サヨナラ負け。同25日の広島戦(東京ドーム)でも、9回1点リードで登板し、二死三塁からVTRのような3連打で逆転を許し、チームの夢がついえた。

 V逸にいら立つ球団内では、以前から澤村への不満の声が渦巻いていた。フロントは「あの8月7日以降、優勝への機運がしぼんだのは事実。菅野にしても、澤村に勝ちを消されていなければ、今頃は最多勝レースに加わっていたかもしれない。数字上は優秀かもしれないが、ウチの場合、見えない部分も査定材料になる。菅野も、昨年はそういう部分で泣いてもらった。澤村にも覚悟してもらうしかない」と“厳冬”を予告する。

 ようやくつかみかけた10勝目が目前で逃げ、さすがの菅野も「4点取ってもらって、いい流れだと思ったんですけど…」とショックを隠し切れず。ポストシーズンへの助走どころか、巨人にとっては最悪な展開で地獄の11連戦が幕を開けた。