負ければV逸が決まる巨人は9日のヤクルト戦(神宮)に5―2で快勝。25年ぶりの広島のリーグ優勝を目前に、チームは4連勝と息を吹き返してきた。その原動力になっているのは目の前での「胴上げ阻止」だが、入り乱れるカープの胴上げプランに困惑を隠せないでいる。

 これが火事場のばか力なのか。プレーボールがかかった直後、長野が初球をバックスクリーン左に運ぶ自身通算9本目の先頭打者本塁打で先制すると、なおも一死一、二塁から村田が左翼席に19号3ランを突き刺し、初回に一挙4得点。4回には亀井の3号ソロも飛び出し、鮮やかな一発攻勢で試合を決めた。

 何とか首の皮一枚で踏みとどまった由伸監督は「われわれは勝ち続けないといけない。胴上げ阻止? それ以前に、勝った負けたというところで勝たないと」と一戦必勝のスタンスを貫いた。

 ナインの心情も同様で、他チームの胴上げは見たくないもの。ましてや、10、11日は本拠地・東京ドームで広島を迎え撃つ。負けはもちろん、引き分けでも四半世紀ぶりの広島の胴上げを見届けるハメになる。長野が「胴上げは見たくないので明日、あさって勝てるように」と言えば、村田も「見たくないですね」と、すぐさま表情を引き締めた。

 もっとも、チーム内は前代未聞の「胴上げ情報」を巡り、いまだ混乱が広がっている。

 巨人が敗れて広島の移動日優勝が決まった場合は、15日のマツダスタジアムでの巨人戦で胴上げが行われるとの情報がカープ側から流れたからだ。巨人が移動日Vを阻止したことで“9・15胴上げ計画”は、どうなるのか?

 巨人サイドとしても、明確な情報をつかみ切れずアタフタ。仮にドーム2連戦のうちに胴上げが行われた場合、マツダでの胴上げは見届けなくても済むのか、それとも2度も歓喜の瞬間に立ち会わされるのか…。そうなれば、まるで罰ゲームのような屈辱二重奏だ。

 前例のない事態に、ベンチ内からは「いいんじゃない? 25年ぶりなんだから。どこでも好きなだけやればいいよ」という寛大な声も漏れてきたが、球団スタッフは「えっ!?」と絶句。「そんなこと、あり得るの? マツダの胴上げはウチも見なきゃいけないの?」と目をパチクリさせた。

 どんなに勝ち続けても、結局は目の前での胴上げを回避できないのか…。錯綜する情報に巨人は頭を抱えている。