首位・広島が2日のヤクルト戦(神宮)で大量17安打を放ち、今季最多の16点を奪って大勝した。打線に火をつけたのは新井貴浩内野手(39)だ。2回、バックスクリーンに史上42人目となる通算300本塁打の決勝2ラン。4月26日に通算2000安打を放った同じ神宮球場でまたも節目の記録を達成した。そんなベテランを奮い立たせた「手紙」とは――。

「先制点につながるホームランになってよかったです。とにかく先制点を取ろうと思って打席に入った」

 節目の300本塁打を放った新井だが、打った直後には渋い表情を見せた。というのも「こすり気味で(中堅手の)比屋根君が捕球体勢に入っていたので。だまされました…」。その後、バックスクリーンに飛び込んだのを確認してから、あらためてガッツポーズ。そんな愛嬌たっぷりなところも、赤ヘルファンの気持ちをつかんで離さないのだろう。

 4月26日のヤクルト戦(神宮)で2000安打を達成。そして今回も…。新井は「大学時代から今までたくさんの思い出がある。ビジターなのにたくさんのファンの方が応援に来てくれる。本当に力になる」と神宮球場との“縁”を語った。

 そんな新井の気持ちを奮い立たせる一通の手紙が届いたのは、2000安打達成の直後だった。送り主は鹿児島・最福寺の池口恵観法主。立ち上る炎の前でお経を唱える護摩行を取り仕切ることで知られる法主。毎オフこの荒行に取り組む新井は恩師と慕っている。

「貴浩君、二千本安打達成おめでとう!」(原文のまま)で始まるその手紙は、全1100文字超の“大作”。池口法主は「今年、護摩行に来た時に『今季(成績が)ダメだったらぶつぞ!』とハッパをかけたら『はい』と神妙に答えてましたよ」と笑みを浮かべ「記録を達成して、そこで気持ちが切れちゃいかんと思った」と手紙を送った意図を語る。

 手紙の中には<心の道を拓くならまずは己を捨てるべし 欲を思えば苦に変わり 欲を外(はず)れば楽となる 心の道は裏と表の二つの道>なる歌がしたためられている。「もう年齢も年齢だから、心を引き締めないといけない。そして若い選手を引っ張る存在になりなさいということ。彼にやる気を出させるのが私の役目ですから」と、この歌の意味を池口法主は説明する。

 そんな熱い思いが込められた手紙。新井は「大切な先生からいただいたものですので、大事に自宅にとってあります」と苦しい時の心の支えにしている。

「2000安打は達成したけれど、新井は優勝を経験したことがない。それが今年一緒にかなうのではと非常に期待しています」という池口法主。無論、新井もそこしか見ていない。