<新IDアナライザー・伊勢孝夫>中日が巻き返すにはビシエドの打力をどう生かすかが重要なポイントになる。

 3―6で敗れた8日のヤクルト戦(神宮)では6回一死一塁で適時二塁打を放った。本来の調子なら弾丸ライナーでスタンドインさせてもおかしくないはずで、絶好調ではないのだろう。しかし、その二塁打も含めて3安打だったし、一時の不振を考えれば、徐々に状態は上がっている。

 もともと打撃技術には定評がある選手。当初、戸惑っていた日本のプロ野球の内角攻めにもしっかり対応してきている。同郷の先輩であるリナレスが巡回コーチに就任したことも追い風になるに違いない。そこで大事なのが4番・ビシエドの後を打つ打者だ。彼と勝負させるためには相手バッテリーが嫌がる選手がいい。現在、ナニータが5番を務めているが、勝負強さを考えれば平田を5番に置いて、ナニータを3番にすることをすすめたい。1番・大島の調子が良ければ3番・ビシエド、4番・平田というのもありだ。

 この日のヤクルト戦で気になったのは2点を追う5回の攻撃だ。無死一塁で杉山は3ボール1ストライクから右飛に倒れたが、この場面では3―2まで待たせるべきだ。 ヤクルト・成瀬は三振するような変化球があるわけではない。

 フルカウントまで待つほうが、走者もスタートを切るので相手は嫌だったはず。そこで右方向へのヒットが出れば一、三塁という好機をつくれていたかもしれない。

 捕手として経験豊富な谷繁監督ならば重々、分かっているはずだが、両軍で300球ほどあるなかのわずか1球で戦局が一変するのが野球というもの。特に夏場以降のシ烈な上位争いではそこでの小さいミスが大きなほころびとなりかねない。逆転Vに向けていま一度、緻密な野球を心掛けることが必要だ。

 (本紙評論家)