まさに“ワンマンショー”だ。広島は29日のヤクルト戦(マツダ)に黒田博樹投手(41)が先発。7回3安打1失点と好投する一方、バットでも今季初安打となる走者一掃の3点適時二塁打と大車輪の活躍。8―1で快勝し、日米通算199勝をマークした。これでチームは1984年以来32年ぶりの11連勝。男気右腕の偉業達成と、25年ぶりの悲願まで赤ヘルの勢いは加速するばかりだ。

 前日(28日)の試合で10連勝達成。歴史的快進撃のたすきを引き継ぐべく、マウンドに上がったのは背番号「15」だった。2回、山田にバックスクリーン左に先制ソロを被弾。だが、今季ここまで25度の逆転勝ちを誇るだけに、これが逆に反撃の導火線に火をつける形となった。

 3回、一死満塁の好機を作ると、菊池が右中間真っ二つの適時二塁打。さらに4番・ルナにも2点適時打が飛び出し一挙4点だ。一方、黒田の安定感は回を重ねるごとに増し、140キロ台の直球で力勝負かと思えば、変化球を内外角に投げ分け相手をかく乱。今季初対戦となった強力ツバメ打線を手玉に取った。

 さらに打撃でも魅せた。6回二死満塁の場面で走者一掃となる左越えの適時二塁打。「もう二度とない」と謙遜したが、黒田はバットでもファンを沸かせた。

 点差が開いたこともあり7回93球で降板。「状態はよかった。今日で終わりなら次の回もいくけど、次の登板もある」と救援を仰いだことにも悔いはない様子だ。これで日米通算200勝の金字塔まであと1。目前の記録にも「達成してみないとどういう気持ちになるか分からない。でも当然、通過点にしないといけない。チームのためにも」と頼もしい。

 いいことずくめの激勝だったが、悩ましい点もなくはない。畝投手コーチは次回登板について「予定通りいく」と、中6日で7月6日の中日戦(金沢)での先発を示唆。中日の主催ゲームであり、球団関係者は「新井の2000安打はビジター(神宮)だったし、本当なら次はマツダで達成の瞬間を(ファンに)見せてあげたい」と本音を打ち明けた。

 中日戦の次は本拠地での巨人戦(7月12~13日)で登板予定。また、球宴(同15~16日)を挟んで次の週は、中日3連戦と阪神3連戦がともに本拠地で開催される。「チケットはすでにほぼ売り切れており、営業の関係(集客したいから)ではない。純粋に広島のファンに見てほしい」(同関係者)。仮に金沢で達成できなければ、広島ファンの前で200勝となる公算が大。黒田もお立ち台で「皆さんの前で達成できれば最高かなと思う」と語ったが、今の広島は次回登板まで連勝を継続していそうな雰囲気すら感じさせる。

 いずれにせよ、7月中には男気右腕の偉業達成が見られそう。それがどこの球場でもファンは喝采を送るに違いない。