鯉の勢いは止まらない。広島は28日のヤクルト戦(三次)を3―2で逃げ切り、1994年以来となる22年ぶりの10連勝をマークした。3回に田中広輔内野手(26)が同点の7号ソロ。4回は新井貴浩内野手(39)の勝ち越し打など4連打を浴びせて今季2度目の対戦となった相手先発の山中をKO。投げては先発の野村祐輔(27)が7回2失点の粘投で自身5連勝となるリーグ単独トップの9勝目を挙げた。貯金は今季最多の15。2位巨人とは最大の9ゲーム差にまで広げ、完全な独走態勢に入った。

 先制されても動じない。広島打線が三次でもはじけた。1点を追う3回だ。二死から田中が山中の甘いスライダーを一閃。「追い込まれていたのでコンパクトにいきました」。切り込み隊長は7号同点ソロを右翼席に放り込んだ。

 4回は先頭のルナが左前打で出ると、鈴木が11試合連続安打となる左前打でチャンス拡大。そして打席にはファン投票で球宴出場を決めたばかりの新井だ。内角高めの直球をコンパクトに振りぬき、左前への適時打で勝ち越し。「とにかく走者をかえせてよかった」と安堵の表情。この打席の時点で得点圏打率3割7分2厘を誇るベテランが、当たり前のように仕事をしてみせた。

 ファン投票で球宴に選ばれた際には「たくさんのファンに投票してもらったので、みんなに喜んでもらいたい」と語っていた。昨年7月8日の三次でのDeNA戦でも3打数2安打の活躍。験のいい球場で1万3642人の満員の観衆を喜ばせた。さらに「外野フライでもいい場面だったので楽な気持ちでいけた」という松山が、初球を右前にはじき返して3点目。4連打で、一気に流れを引き寄せた。

 先発の野村はカーブやシュートなど変化球を軸に、コーナーを突く丁寧な投球。雄平と大引にそれぞれソロを被弾したがその2点にしのぎ、ハーラー単独トップの9勝目を飾った。

 特に一昨年からこの試合前まで35打数15安打(打率4割2分9厘)と“カモ”にされていた4番・山田を3打数無安打1奪三振と封じ込め「いいバッターなのでゾーンを広く使いました」と手応え十分の様子。これで6月は負けなしの4戦4勝で、月間MVPの有力候補となったが「それは考えてない」と断言する。

 2012年のセ・リーグ新人王も昨季は5勝止まり。今季は先輩・黒田のアドバイスで立ち直るキッカケをつかんだが、決して男気流だけではない。キャンプからわざとテンポを速くしてブルペン投球を行う独自の調整法も取り入れ、肉体に“変化”をつけている。チーム関係者は「心肺機能を高める狙いがあるらしい。前田健太(ドジャース)が抜け、独り立ちの自覚が芽生えた証拠だね」と目を細める。

 ここ5試合は好投しながら6回以下で降板していたが、この日は7回を投げ中継ぎ陣の負担を減らすことに成功。交流戦明けで登板間隔が中11日と空いたが「(その間に)ランニングを多く取り入れた。時期も時期だし7、8月を乗り切るため」と課題となっているスタミナ強化にも励み、その成果が早くも表れた格好だ。そんな野村の意識改革はチームと自身の成績に直結している。

 勢いが止まる気配のない広島。1991年以来25年ぶりのリーグ優勝へ一直線に進む。