巨人・内海哲也投手(34)が1日のオリックス戦(京セラ)で先発し、6回無失点の快投で今季初勝利を飾った。チームも3連勝で5カードぶりの勝ち越しを決め、貯金を1として2位に浮上した。いい流れを呼び込んだベテラン左腕の復活劇を、本紙評論家・前田幸長氏はどのように見たか。現役時代から内海と付き合いが深いからこそ、その論評はあえて“辛口トーク”になった。

 マウンドに立った内海は終始落ち着いていた。しっかりと両サイドを突きながら、緩急の利いた投球術でオリックス打線を翻弄。その一方で打線は9安打を放ったものの初回の坂本の内野ゴロによる1点のみ。7回まで毎回の13残塁とフラストレーションがたまる内容だったが、それでもベテラン左腕は虎の子の1点を死守すべく力投した。

 6回91球、3安打無失点で今季初勝利。昨年10月4日のヤクルト戦(東京ドーム)以来、241日ぶりの白星をつかみ取った。由伸監督も「もっと(打線が)援護してあげれば良かったが、よく投げれていたと思う。低めを突いて、何とか打たせて取るという内海らしいピッチングができていた」と評価を与えた。

 今季登板した2試合はいずれも敗戦投手。今回は一軍残留をかけたラストチャンスだった。内海もそれは重々承知で「今日は最後というつもりでマウンドに上がった」というが「喜怒哀楽が出るとピッチングに影響してしまう。“無”のつもりで投げた」ことが好結果につながった。

 内海とは2007年までチームメートで、同じ左腕として先輩後輩の間柄だったのが前田氏。後輩の今季初勝利について「春のときのことを考えると、まずは良かった」と口にし、こう続けた。

「今年、沖縄の春季キャンプを取材に行った際、テツ(内海)に話を聞いたが、最後までまったく笑顔はなかった。まるで自分に言い聞かせるように『結果を出さないと一軍に残れない』と言っていたのが印象に残っている。彼は昨年の開幕前に左前腕部を肉離れしてから(コンディションに)不安を感じていたし、その間に菅野や若い投手たちが次々と台頭してきたことで、自分が追い込まれて苦しい立場に置かれているという強い危機感があったのだろう」

 だが、この日の快投については、シビアな目で分析することも忘れなかった。

「テツの持ち味である球の“押し込み”は、やはりどうしても足りなかった。腕の振りが良くないから、相手打者にベース付近で“ピュッ”と来るように感じられる球威も足りなくなる。この日は、それを制球力でカバーしていた。特に右打者に対するインサイドのコントロールは素晴らしかった。ただし、この投球内容で今後も楽観できるかといえば、そうではない。テツも当然、感じているはずだ。打ちあぐねたオリックス打線に助けられたところもあった。一度垂れてしまったものを元に戻すのは難儀。今後は全盛期の投球術を追い求めるのは難しい部分もあるだろう。自分なりに試行錯誤しながら投球のマイナーチェンジを図っていくことが生き延びる道だ」

 前田氏の指摘するように内海にとって、今季初勝利は手放しで喜べる白星ではなさそうだが…。ベテラン左腕の復活劇はこれからが正念場だ。