昨オフにオリックスを戦力外となり、契約先のないまま孤独な自主トレを続けている井川慶投手(36)が“先発ローテーション復帰”に燃えている。2003年に20勝をマークして阪神を18年ぶりの優勝に導き、MVPと沢村賞に輝いた男は現在、独立リーグ・兵庫ブルーサンダーズの練習に参加。若い選手と汗を流し、もう一度、マウンドに立つことを目指す不屈の左腕を直撃した。

 ――ブルーサンダーズに合流した経緯は

 井川:2月ごろからやらせてもらっています。続木さん(野手コーチ、元阪神コーチ)に「ウチでも練習できるよ」って声をかけてもらった。関西、関東を転々としていたのでよかったです。

 ――どんな練習を

 井川:アップやキャッチボール、手伝い。ボール拾いやノックのボール渡しとか。人数も少ないんでそういうのをやる方が選手も楽かな、と。選手がネット片付けやグラウンド整備をやっていますからね。参加ペースはできる範囲内で。(ホーム球場の)三田やビジターの姫路、花園も行きます。

 ――NPBを目指す若い選手との練習は

 井川:素直な子ばかりですよ。いろんなことを聞いてきてくれるし、プレーでは見せられないけど、うまく自分を利用してくれたら、と思う。精神的なことを話したりもしています。アメリカでのマイナー時代も上を目指す若い子とやっていたので、あのころを思い出します。

 ――昨オフにオリックスを戦力外になり、トライアウトは受けなかった

 井川:単純に日程的な問題と、受けたところで…というのもある。それよりもリセットして、しっかり体作りをしたかった。昨年は(二軍で)5月くらいにマウンド復帰して、調子悪くて打たれて、体を作り直して終盤にやっとよくなってきていた。でも、体作りをしていた分、負担もかかっていた。1回、リセットして今年1年しっかりやってみて、どれくらいまでいくのか。チームに入って、というのではない。

 ――当時、他球団からいい話は

 井川:独立リーグからは話がありましたよ。でも、体が間に合っていなかった。

 ――NPBはもう厳しいと自覚していた

 井川:あんまり考えていなかった。どこでもいいと思っていました。海外も全部、どこでも…。エージェントが話を持ってきていましたけど、11月は肩の状態も悪くなっていたので。(グリーンカードの滞在で)アメリカに行っていたのもあって。

 ――さすがのマイペース男も悩んだのでは

 井川:悩みは全くしないですよ(笑い)。野球を続けるならいい状態で、というのがあった。オリックスの最後は体を追い込んでいい状態だったんで、まだできるかな、と。今季の途中から試合で投げれたらいいと思っています。

 ――え、どこで投げる?

 井川:決めてはいないけど、エージェントに「ちょっとチームを探してくれ」と言えば探してもらえますし。

 ――ブルーサンダーズ入団は

 井川:よくしてもらってますし、恩もある。段階を踏んで、そういう話をしてもらえるなら、そういう方向になる。第一候補にはなると思います。まだテスト生みたいなもんなんで、もしチームに入るなら戦える状態になってから参加したい。

 ――目標はNPB復帰

 井川:NPBでも独立でも、1シーズンを先発で投げれれば、と思っています。こだわりはない。

 ――阪神・藤川のように独立リーグからNPB復帰も

 井川:なくはないけど、そこまでではなく、自分をまずいい状態に持っていくことが仕事。まだ中学生レベルというか、球が追いついていない。結果が出てエージェントがどう動くか。必要とされるところでやれればいい。

 ――オリックスでの4年間は

 井川:岡田監督に誘われて入って、監督のために来た。それが勝利に貢献できなかったので球団にも申し訳ない。それでも4年間、いさせてもらって感謝しています。退団するときにフロントの方に「オリックスに来てくれてありがとう」と言ってもらえてうれしかったですね。今は外から応援してます。

 ――7月で37歳になる

 井川:上を目指す、という気持ちは若いころより難しいし、体力的にもちょっと走って肉離れとかね。それでも40歳近くまでやっている先輩はたくさんいる。満足したな、というくらいまではやりたい。

 ――満足とは

 井川:1シーズン、先発でローテで回れたら満足すると思う。結果が出なくても納得する。日本に帰って野球が満足にできていないですから。

 ――現在は無収入

 井川:そうですよ。まあ、大丈夫です(笑い)。ちゃんと蓄えはあるし、自分は使ってないし、必要最低限。ぜいたくはしてないです。

 ――趣味のゲームは

 井川:時間なくてやってません。ゲームしながらウエートをやるリズムがあったんですよ。何分やったら何分やるとか。その方が集中できたりする。今は忙しくてゲーセンにも行ってません。サッカーも時間なくて見てないですよ。

 ――何がそんなに忙しいのか?

 井川:姫路、花園と移動もあるし、ウエートもあるし、嫁さんとどっか行ったりとかもある。意外と時間はないんです。

 ――NPBの新規契約の期限は7月末だが…

 井川:そんなの気にならない。でも6、7月くらいに名前が出るように頑張りたいです。

☆いがわ・けい=1979年7月13日、茨城県大洗町出身。左投げ左打ち。水戸商から1997年のドラフト2位で阪神に入団。2003年には20勝5敗でチームの優勝に貢献し、沢村賞とMVPを受賞した。エースとして5年連続2桁勝利をマークしたが、ポスティングシステムで07年からヤンキースに移籍。5年間でメジャー2勝に終わった。12年からオリックスに移籍し、4年間で7勝。15年オフに戦力外となり、新天地を求めて自主トレを続ける。16年2月から独立リーグ「ベースボール・ファースト・リーグ」兵庫ブルーサンダーズの練習に参加している。