これぞエースだ。巨人の菅野智之投手(26)が5日の広島戦(東京ドーム)で9回を5安打2失点に抑え、今季3度目の完投勝利を飾った。7回に天谷に2ランを浴びて連続自責点0は40イニングで途切れたが、無四球10奪三振の快投で首位奪回に貢献した。

 最後まで気迫十分だった。広島とは今季初対戦で「何とか嫌な印象を与えたいと思っていた」。初回に二死から丸に二塁打されたが、6回までに許した安打はその1本だけ。新井、エルドレッドの“飛車角”不在とはいえ、出すとうるさい田中と菊池の1、2番には最後まで出塁を許さなかった。

 快投にみそをつけてしまったのは7回だ。二死二塁から天谷に2ランを被弾。3月31日のDeNA戦(横浜)の8回から続いていた自責点ゼロの投球は40イニングでストップ。それでもエースは動じず、終わってみれば今季2度目の無四球完投勝利。107球とテンポのいい投球で、両リーグ今季最短の2時間3分で試合を終わらせた。お立ち台では、天谷に2ランを喫したシーンを「あそこは欲が出ましたね。これから(捕手の)小林(誠)と反省会します」と振り返り、スタンドの笑いを誘った。

 これまで以上に菅野が絶対的な存在となっている背景には、V奪回とは別のモチベーションもある。日本代表の侍ジャパンでエースの座をつかみ取ることだ。

 昨秋11月に開催された「プレミア12」で菅野はプロ入り後、初めて国際大会に参加。しかし、侍ジャパンでは前田健太(当時広島、現ドジャース)、大谷翔平(日本ハム)に次ぐ位置付けだった。しかも本番と直前のプエルトリコとの壮行試合を含めた3試合の登板で計9イニングを投げ、防御率4・00と納得のいく成績を残せなかった。

「だからこそ来春開催のWBCに人一倍の強い思いを抱いていて『絶対に出たい』と言い切っています。今季は相手チームを圧倒して勝ち星を積み重ねる。その上でチームを日本一に導けば、胸を張って次のWBCで“侍のエース”として世界を相手に戦える。菅野君はそういうリベンジのシナリオをひそかに描きながら今、マウンドで力投を続けているのです」(菅野に近い関係者)

 実際に菅野も「前回のプレミアではほとんど活躍できなかった。まだまだ力がないと痛感した」と話していた。その悔しさが飛躍のバネになっているのは間違いない。巨人の大黒柱はライバルを圧倒し続けて、日本球界のトップに上り詰める。