【岩村明憲 ガンガンいこう!(12)】親友付き合いをしていたラミレスの優しさに感激したのは、2006年の年明けのことです。当時、僕は結婚したばかり。奥さんと一緒に新婚旅行を兼ねて、ハワイからロス、そしてラミレスが住むフロリダへと渡っていきました。

 事前に「遊びに行くよ!」とは伝えていたんだけど、オーランドの空港にラミレスが自分で車を運転して来てくれてね。両手で歓迎のポーズを示してくれました。

 いまだにあの時の光景ははっきりと覚えています。当時、しっかり年俸は稼いでいたし、空港の迎えだって、誰か人に頼んでも良かったはず。それでも僕のために、自ら来てくれた。人に好かれるのはこういうところにあるんだろうなと思いました。

 さらにその時はメジャーのクリーブランド・インディアンスがキャンプを張るフロリダ州のウインターヘブンの練習場まで連れていってくれて、「今日はここで練習しよう!」と言いだしました。僕としては「おいおい、そんな簡単に練習できるの?」と不安だったんだけど、ラミレスは意に介しませんでした。

 実際はかつて所属したインディアンスの関係者を通じて許可を取っていてくれたらしいんだけど、そういう気配りもまたうれしくてね。

 そんなラミレスが今年からはDeNAベイスターズの監督となり、また新たな挑戦をしているわけですが、彼は指導者になりたいとずっと昔から言っていました。その意味で勉強もしてきただろうし、必ずや結果を残せると信じています。

 その理由としてDeNAベイスターズは現在若返りを図っているという部分があります。若いナインが多いということは吸収力があるチームだと思うし、誰がトップを務めるかでだいぶ変わってくるように思います。

 昨シーズンが終わってからDeNAベイスターズの三嶋投手に会う機会がありました。少し話を聞くと「壁に当たって悩んでいる」と打ち明けてくれました。今年でプロ4年目を迎え、チームからも期待されるエース候補だけど、少し伸び悩んでいるのかなという印象を受けました。

 こういった選手に対してもラミレスの言葉はよく響くと思います。いかに選手にやる気を出させるか。中畑清前監督もそのあたりのムード作りは上手だったと思いますが、ラミレスはより若く、選手の心情を理解しやすいというメリットがあります。

 外国人監督ならではの難しさはあると思いますが、そこは持ち前のバイタリティーで、ぜひ頑張ってもらいたいです。

 また指導者といえば、昨年監督就任1年目ですぐに結果を出したヤクルト・真中監督にも思い出があって…。