由伸巨人がいよい出陣の時を迎える。翌日にヤクルト戦を控えたチームは24日、東京ドームで開幕前の最終調整を行った。ただ、船出を目前にしても高橋由伸監督(40)は泰然自若だ。戦術確認やオーダー決定などの監督業に集中する一方、グラウンド外では自らの人脈を駆使し、ナインの“身辺調査”にも着手。長いシーズンを見越した危機管理に乗り出している。

 グラウンドで大勢の報道陣に囲まれての開幕前日会見。それでも、由伸監督の表情に硬さは見られなかった。「いよいよ始まるな、というのはありますが、選手のときより気持ちの高ぶりはない。(現役時代は)明日からどうなるのか、やれるのかという緊張感もあったが、まだまだ考えることもたくさんあるので」とサラリと言ってのけた。

 開幕直前まで、球団は賭博問題に揺れた。指揮官は現場を代表し「われわれはグラウンドで一生懸命プレーして、皆さんにいいものをお見せするしかできませんし、それを心に留めて、しっかりできれば」とコメントした。

 自分が指揮を執るチームでは、二度と今回のような不祥事を起こさない。その強い意志のもと、由伸監督はひそかに、直轄の“諜報機関”を立ち上げていた。指揮官は球界外にも政財界、芸能界、報道機関まで幅広い人脈を持つ。最近はそうした異業種関係者と顔を合わせるたびに「チームにとって好ましくない噂や話があれば、すぐに教えてほしい」と情報提供を呼びかけているという。

 球団内でのリスク管理にも余念がない。幹部によれば「シーズン中に同じような事態が起きたらアウト。監督が一番気にしているのはそこだよ。われわれにも『これ以上、球団が把握している危ない話はないか』と聞いてくる」と言い、「彼はチームに迷惑をかけたり、輪を乱す行為には厳しいからね。監督に一度にらまれたら、その選手は使われないと思ったほうがいい」とナインに“警告”した。

 開幕戦へ向けては「私自身、監督として本当のスタート。チームとしても勝ってスタートできればいい」と語り「負けていい試合はないし、勝ちに最善を尽くしたい」とシーズンへの意気込みを語った指揮官。グラウンドでの戦いに集中するためにも、今季は“由伸CIA”がチーム内に鋭いにらみを利かせる。