【伊勢孝夫「新IDアナライザー」ヤクルト編】山田には悪いが、よほどのことがない限り今年のセ・リーグのホームラン王はバレンティンで決まりやな。まるでかなわないだろう。先月、沖縄・浦添キャンプで打撃を見たが、それぐらい今年のバレンティンの状態はいい。2014年、15年と故障で二軍調整しているときにコーチとしてサポートしたが、そのときとはまるで違っている。
一番目立つのはボールを見逃すときの足元の良さ。しっかりと踏ん張って見逃すことができている。ぐらついていない。状態がいい証しだ。本人とも久々に話したが、表情も明るい。「今年はホームランキングやな。何本打つんや。60本か?」って聞いたら「う~ん」とニヤッとして首をかしげとったわ。最低でも40~45本、普通にいけば50本も軽い。本人もそのぐらいは頭にあると思う。昨季はいなかったヤクルト打線にバレンティンが一枚かんでくる。これは相手球団にとっては相当な脅威だと思う。
ただし、バレンティンにも心配な面はある。それは勝負を避けられたときだ。塁に出たって走るわけでもない。塁にいたらゲッツーだってある。どうしてもピンチの場面で歩かされるケースは増えてくる。あの子は打ちたいばっかりの子。向こうは勝負をするつもりがなく、歩かせたいのに飛びついていってしまう。コーチが「無理やり振りにいくなよ」「チームのためやで」とうまく説得できるかが重要だ。
もともとが速い真っすぐよりも緩い球のほうが得意なタイプ。外角スライダー一辺倒の攻めに対してはライトに放り込む力も持っている。かといってインサイドでも低いのは対応できる。少々の球ならスタンドに運ぶパワーがある。
以前、横浜スタジアムで1試合3発打ったときなんか、バットが折れていたのに左中間に運んだ。バレンティンを抑えるなら、勇気を持ってインハイに真っすぐでどれだけ攻められるか。他球団もいろいろと仕掛けてくるだろうが、頭のいい子だからね。最終的にはそれにも対応していくと思う。(本紙評論家)