【伊勢孝夫「IDアナライザー」中日編】先日、中日のキャンプを見てきたが、打撃に関していいものを持っているなと感じるのは、やはり高橋周平だね。ダテに4年もプロで飯を食っていない。加藤(チーフ打撃兼野手総合コーチ)もしょっちゅう話しかけているのは期待の表れだろう。三塁のレギュラーとして成長させるべきだと思う。

 高橋の将来のことを考えたら、シーズンを通して我慢して使うべき。問題は谷繁監督が、どれだけ我慢できるかとなってくる。「打てなくてもいい」という余裕のあるチーム状態ならそれもできるが、セ・リーグは、だんごになるのは決まっている。なかなか、そうはいかない。特に問題なのが左投手が出てきたとき。高橋を6番、7番に置いておけば、チャンスで回ってくる。そういうときに相手は左投手をぶつけてくる。左でも代えないほうが本人にとってはプラスになるが、なかなか難しい。

 そこで提案したいのが高橋の8番での起用だ。8番ならピンチで左投手でも、相手ベンチは勝負を避けて9番の投手と対戦する確率がアップする。左投手と勝負する機会が減ることで打席数が増える。この8番起用はヤクルトの池山(現楽天打撃コーチ)のときにやった。イケが売り出したころ、球宴明けに全く打てなくなった。それでも8番で起用し続けた。8番なら打てなくても、それほどチームにも支障はない。我慢して使ったことが、その後の飛躍につながった。

 山田にしてもそう。2011年の中日とのクライマックスシリーズで川端が故障で離脱。仕方なく1年目の山田を起用した。ノーヒットと結果は出なかったが、ほとんどの当たりが芯を食っとった。あの経験が今に生きていると思う。いきなり最初から活躍できる選手なんて、そうはない。どこかで首脳陣が「こいつに何とか大きくなってほしい」と思い、我慢して使ったからこそスター選手が生まれる。高橋には、そんな我慢の価値がある資質を感じる。(本紙評論家)