昨年のセ・リーグ覇者のヤクルトで大黒柱的な存在なのが、チーム最年長でプロ15年目を迎える石川雅規投手(36)だ。今季、ベテラン左腕が目標とするのは、昨季限りで現役を引退した元中日の山本昌氏(50)。そんな石川を本紙評論家・前田幸長氏が直撃した。

【前田幸長 直球勝負】石川とは初めて会ったんだけど、話に聞いていた通りの真面目な男だった。そうじゃないとこの世界で長くやれない。昨季はチームトップの13勝。それでもまだ「油断していられない」と言っていた。

 そんな石川が目指しているのが山本昌さん。そこで私が“ヤクルトのマサ”になったらいいじゃないかと水を向けると「目標は大きく持ちたいですから。でも50歳まで(現役を)やった昌さんはすごすぎますけどね」。まあ山本昌さんの50歳とまでは言わないが、石川なら200勝までいくかもしれないと思う。

 今、144勝だからあと56勝。本人が「30歳までの1勝と30歳を超えての1勝は違う」と話していた通り、今の年齢で勝ちを積み上げることはかなり厳しいが…。今回、彼の意識の高さに触れ、そう思わずにはいられなかった。

 彼は野球をする上で一番大事にしていることは「キャッチボール」だと答えた。私もキャッチボールは現役時代、意識していたが、石川はさらに「朝起きたら野球がうまくなっているんじゃないかと思ってやっている」とも。向上心があるよね。私はそんなこと思ったことはない。あれだけの成績を残しても、まだまだだと思っているから日々進歩しているんだろう。

 最速が130キロ台という球の遅さ、あとこれを言ったら失礼だけど、あの小柄ななりで勝ち続けるのは本当にすごいこと。スーパーエースではないけれど、今の形で取り組んでいれば驚くような数字を出すんじゃないかな。

 真中監督も石川のことは計算に入れているからね。それもあって私が監督に「投手陣、いいんじゃないか」と振ると「先発の数も揃っていますから」とニヤリとしていた。自信を持っているんだろう。今年、石川がどれだけ勝ち星を積み重ねられるのか、大いに注目したい。(本紙評論家)