阪神のマット・ヘイグ内野手(30=前ブルージェイズ)は本物か。7日、沖縄・宜野座キャンプで行われたシート打撃では今成ら三塁争いのライバルたちが猛アピール。そんな中、大本命のはずの新助っ人は2打数無安打と快音なし。しかし、本紙評論家の伊勢孝夫氏(前ヤクルトバッティングアドバイザー)はここまでのフリー打撃での内容を高評価。日本で成功する可能性ありと指摘した。

【伊勢孝夫 新IDアナライザー】キャンプはまだ序盤とあって評価は難しいところだが、それでもヘイグのフリー打撃には感心させられた。私のコーチ経験から言うと、加入したばかりのキャンプ序盤から力任せに打っている外国人選手がシーズンで成功した例を見たことがない。しかし、ヘイグの打撃練習には明確な意図が感じられる。

 柵越えを連発しているゴメスとは対照的に大飛球はごくわずか。一見すると物足りなさを感じるかもしれない。しかし、評価したいのは逆方向への打撃だ。練習中、左翼へ引っ張る場面ももちろんあるのだが、要所ではセンターから逆方向を意識していることが見て取れる。低めの変化球が多投される日本のプロ野球に新外国人が適応するためには何よりこの逆方向への意識が肝心なのだ。よほど「日本で成功するためにはセンターから逆だ」ということを言われてきたのだろう。かつてヤクルトを初の日本一に導いたデーブ・ヒルトンや歴代2位のシーズン打点記録を持つロバート・ローズも練習では無駄に引っ張ることは一切なく、逆方向への打撃を意識していた。ヘイグはそれらの助っ人と重なる面がある。

 入ったばかりの外国人はアピールとばかりに柵越えを狙い遠くへ飛ばしたがるもの。しかし、周囲の目を気にせず、自らの打撃練習に徹するメンタルも見逃せない。シート打撃で無安打に終わったこの日も「今は結果を気にする時期ではない」と話していたというが、マイペースを貫く精神はファンやマスコミからの注目度の高い阪神で成功するためには必要な要素だ。

 打撃スタイルからは“つなぎ役”として力を発揮しそうだ。以前、提案したように2番・鳥谷とすれば3番にヘイグを置くのがベスト。チャンスを拡大する役割を任せれば阪神打線の攻撃は厚みを増すだろう。今後はいかに日本人投手の配球に対応していけるのか。あのバレンティンも来た球を単純に打っているようにみえるが、6割以上は配球を読んで打っている。私が外国人選手を預かるときには「アホではできんぞ」「相手の立場で配球を考えないと成功しないよ」と口酸っぱく言ってきた。ヘイグも阪神スコアラー陣から提供されるライバル球団の配球データをいかに消化できるかが鍵を握る。(本紙評論家)