【赤坂英一「赤ペン!!」】 巨人の新人も変わったものだ。いや、まともになったと言うべきか。

 新人合同自主トレ初日(8日)、テレビの取材に応じたドラフト1位・桜井(立命大)に「全国の視聴者に自己アピールをしてください」という要望が出された。これに笑ってうなずいた桜井、「巨人のドラフト1位の桜井俊貴です。持ち味はスタミナです。開幕一軍を目指して頑張りますので、応援よろしくお願いします!」と、実にソツなく応じてみせたのだ。

 ヤクルトやDeNA、ロッテやオリックスなら新人がこんなアピールをする光景は毎年おなじみである。しかし、巨人のドライチがテレビカメラに向かって自己紹介したのは前代未聞だ。少なくとも、1989年以降、ほぼ毎年新人を取材している私の記憶にはない。

 そもそも、93~2006年のドライチは逆指名制度で入ってきたため、巨人入りを明らかにした時点で有名選手になっていた。98年1位の上原(レッドソックス)のように「お金で転んだと言われるでしょう」と発言し、正式契約を前に叩かれた新人もいる。

 長野、澤村、菅野らもドラフト前に巨人以外には行かないと表明。事実上の逆指名で入団しており、自己紹介をする必要がなかった。澤村など、自主トレ初日の囲み取材で質問に不快感を示し、「答えなきゃいけないんですか」と、回答を拒否したこともあったほど。

 そうしたケースと比較すると、桜井がどれほどの“神対応”を見せたか分かるだろう。それだけでなく、取材終了後には球団のファン事業部から要請されたサイン会にも積極的に協力。スタンドに並んだ約50人のファンが差し出す色紙に、丁寧にペンを走らせた。

「最近の新人たちは本当によくやってくれてますよ。時間が限られている中で、しっかりファンに対応できる選手が増えたのは、ありがたいことですね」と目を細めたのは藤田浩雅ファン事業部課長。サインを求めるファンが少ない新人に、「自分の実力でファンを集められるようになればいいんだよ」と声をかけていたこの藤田課長も、現役時代は84年に阪急(現オリックス)で新人王を獲得した元捕手だった。こういう地道な努力が、ファン層の拡大につながると信じたい。

 ま、一ライターとしては、○○や××みたいにクソ生意気だった新人も嫌いではありませんが。