巨人・阿部慎之助内野手(36)が来季、再びマスクをかぶることになりそうだ。これまでにも高橋由伸監督(40)が阿部の捕手復帰には含みを持たせていたが、ここへきて本人も覚悟を決めた模様。ただ、体はすでに満身創痍で一歩間違えればこの選択が“致命傷”になりかねない。阿部の背中を押したものは――。

 一塁手専念か捕手兼任か。

 由伸監督が「ゼロじゃない」と話していた阿部の捕手復帰に関して、にわかに動きが出てきた。関係者によれば、阿部は「来年は捕手もやることになると思う」と周囲に漏らしているという。

 マスクをかぶれば、それだけケガのリスクも高まる。今季は一塁手として開幕を迎えたが、捕手に故障者が出るなどのチーム事情から、わずか7試合目で捕手に逆戻り。途中出場した6月6日のソフトバンク戦(東京ドーム)でファウルチップがマスクを直撃。慢性的に抱えていた首痛が悪化し、出場選手登録を抹消される事態となった。

 そもそも阿部の一塁手転向は肉体的な負担を減らすため。“もう一撃”を食らえば、それこそ現役を続けられる保証はなくなる。引退のリスクを冒してまでマスクをかぶるのは「(由伸)監督を男にしたい」(阿部)との思いだけではないようだ。

 動機の一つには原前監督との“約束”もある。チーム関係者は「思うような成績を残せず(前監督を)胴上げできなかった責任と悔しさがあるのだろう」と代弁する。巨人は10月17日にヤクルトとのクライマックスシリーズ・ファイナルステージで敗れて終戦。ナインには試合後のクラブハウスで原前監督の辞意が伝えられたが、阿部と坂本は引き揚げる前のグラウンドで呼び止められ、こう告げられた。

「勇人、慎之助、いろいろご苦労さん。俺、辞めるから。頼むぞ!」

 2007年から8年間にわたって主将を務めた阿部にも退任は寝耳に水だった。阿部は当時の心境を本紙に「事前に? 全然知らなかった。あの場でいきなり『辞めるから』って言われて、どうしていいか分からなくて固まった。(優勝できずに)申し訳ない気持ちになった」と明かした。

 他のナインに先駆けて重大な決断を伝えられた分“来年こそ”との思いを強めたのは間違いない。背番号10は由伸監督を胴上げし、前監督の無念も晴らせるか。