このまま海を渡ることになるのか。広島・前田健太投手(27)が24日、本拠地のマツダスタジアムを訪れ、球団側にポスティングシステムによる今オフのメジャーリーグ移籍希望を申し入れた。エースの強い要望を受け、球団側は熟慮の後に来週末にも方向性を示す方針。その一方で前田がメジャー複数球団のスカウトたちの間で期待の高さを示すニックネームをひそかに付けられていることも判明した。

 晴れやかな表情だった。鈴木清明球団本部長(61)と約1時間の話し合いを終えた前田は「自分の気持ちを伝えました。メジャーリーグに挑戦したい思いを伝えた」と口にし、こう続けた。

「毎年、年々思いは強くなっている。年齢も1つずつとっていくので、できれば若い時にという思いや、カープで優勝といういろんな思いがある中で、行きたいという気持ちが消えるというよりも強くなっていた」

 昨オフもメジャー移籍の要望を伝えたものの、球団側の答えは「NO」。しかし今年はチームの優勝こそ逃したものの最多勝を獲得し、沢村賞も受賞。エースの働きを球団側も十分に評価しており、その機運は高まりつつある。「今日で全部決まったわけではないので、これからも(球団とは)話をすると思います」と前田は述べたが、早ければ来月早々にも夢実現の可否が判明することになりそうな気配だ。

 そんな前田に対するメジャー側の評価は過去にポスティングシステムを使って移籍した松坂大輔(元レッドソックス、現ソフトバンク)やダルビッシュ有(レンジャーズ)、田中将大(ヤンキース)ら日本人大物投手のように必ずしも「青天井」というわけではない。

 一部米メディアの中には「リリーフが妥当ではないか」と獲得に慎重な構えを求める声も確かにあるが、それでもダイヤモンドバックスのデーブ・スチュワートGMのように今月上旬のGM会議で報道陣を通じて「リーグ全体がマエダに興味を持っている。アイ・ラブ・マエダ」と堂々のラブコールを送るなど前田獲得に強い興味を示すメジャーの球団は決して少なくはない。

 先の国際大会「プレミア12」でスタンドから前田に熱い視線を送っていた1人のア・リーグ極東スカウトは「彼はクリフ・リー(フィリーズ、メジャー通算13年で143勝の左腕)のように多彩な変化球を持ち、どの球種でもストライクを取れる制球力がある。そしてロイ・ハラデー(元ブルージェイズなど、メジャー通算16年で203勝の右腕)のようなハートの強さを持ち“グラウンド・ボール・ピッチャー(打たせて取るタイプの投手)”でもある。マエダは、あの偉大な2人のいい部分を持ち合わせている」と分析。前田を評価する他のメジャー球団のスカウトも、クリフ・リーとロイ・ハラデーの名前を合体させて「クリフ・ハラデー」とし、英表記の頭文字を取って「CH(チャネル)」とのニックネームを前田にひそかに付けていることも打ち明けた。

 晴れて球団側からメジャー移籍を容認され、前田は「マエケン」改め「CH」として海を渡るのか――。