阪神は高知・安芸秋季キャンプを打ち上げた。チーム「変革」に燃える金本知憲監督(47)のスパルタ方針の下、極限まで鍛え上げられた若手ナインだが、実はその舞台裏でひとつの壮大なる“計画”が決行されていた。それは「虎の山田づくり大作戦」だ。

「よく走ったし、個人個人が課題にしっかり取り組んだ。若手中心のいい安芸キャンプだった。野球に対する取り組み方や目の色が変わった選手が何人かいる。収穫はそのへん」。所用でキャンプ地を一足先に離れた金本監督に代わり指揮を執った高代ヘッドコーチは、リレー走にウエートトレなど基礎体力強化に重点が置かれた今キャンプをこう総括した。

 今後は各選手が自主トレでレベルアップを目指していくが、実は今キャンプで「実験的」に行われたことがある。それが今季、打率3割、30本塁打、30盗塁の「トリプルスリー」を達成し、本塁打王にも輝いたヤクルト・山田哲人内野手(23)の練習方法の導入だった。

 山田といえば試合前などでの「十数種類に及ぶティー打撃練習」が話題になった。山田の礎を築いたとされる師匠のヤクルト・杉村打撃コーチとともに行ってきた変則のティー打撃でバランスボールに座ったり、歩いたり、真横からトスを上げたりと様々なバリエーションがある。この「山田のティー打撃」を新任の片岡篤史打撃コーチ(46)の提案で練習に組み込んだのだ。

 ヤクルトの“パクリ”と言われるのは百も承知している。だが、虎の本気度はハンパではない。今キャンプからの導入は片岡コーチの発案だが、実は球団はシーズン中から山田のティー打撃を徹底研究。甲子園で行われたヤクルト戦の試合前、ネット裏で阪神のスタッフが山田のティー打撃をつぶさにチェック。もともと導入に向けて準備を進めていたという。

 この練習法にはナインも「普通のティーよりも効果的だと思う。例えば、座りながらティーをするとバットのヘッドを意識しないとうまくスイングできない。ヘッドを利かすための、いい練習になる」「すごくいい。何とかこの中から自分に合うティーを見つけて来春キャンプやシーズン中に生かしていきたい」などと話す。評判がすこぶるいいだけに、来春キャンプやシーズン中ではいよいよ本格導入となりそうだ。

 江越、陽川、そしてドラフト1位で指名した高山俊外野手(22=明大)など大砲候補が控える阪神。必死の「山田大作戦」でスター誕生となるか。