【台北発】野球の国際大会「プレミア12」は11日、1次ラウンドが行われ、B組で1勝0敗の日本は台北市の天母野球場でメキシコと対戦。苦しみながらも6―5でサヨナラ勝ちを収め、殊勲の一打を放った日本ハム・中田翔内野手(26)は、この日5打点の大暴れだった。それにしてもここまでの苦戦は想定外だったはず。これが国際大会の怖さなのか…。

 侍ジャパンの前4番・中田が、全5打席中、四球を除く4打席の全てで打点を挙げる3打数3安打5打点の大活躍で、日本の2連勝に貢献した。

 5―5の同点に追いつかれた直後の9回一死一、二塁。中田の打球が中堅右に落ちると、二塁走者・山田(ヤクルト)が一気にサヨナラのホームイン。逆転2ラン、中犠飛、中前適時打で日本が挙げた6得点のうち、実に5打点をひとりでマークした主役を中心に、侍ナインの手荒い祝福の輪ができた。

 中田は「正直、目の前で筒香が敬遠されて気合が入った。(5打点は)周りの先輩方がチャンスで回してくれたので、何とかしないといけないという気持ちで打席に立てた。1打席1打席集中できていると思うし、ゲームに入って自然と気合が入る」と、侍合流直前の秋季練習で不調に悩んでいたのがうそのように2戦合計7打数5安打(打率7割1分4厘)、1本塁打、5打点と上昇気流に乗っている。

 そこには中田自身が「おかわりさんがいることで自然と楽に打席に立てている」と語る侍の現4番・中村剛也内野手(32=西武)の存在がある。プロ野球歴代3位となる6度の本塁打王、3度の打点王に輝くおかわり先輩は「いまさらもう何も聞くことはない」(中田)とこれまでの西武戦のたびに、練習中の打撃ケージ脇で構えからボールの待ち方、ボールへのバットの入れ方に至るあらゆる打撃理論を聞いてきたホームランアーティスト。今回、侍の4番を明け渡した中田がその実力を認め、尊敬する真の4番打者だ。

 心の底から認める大打者だけにジャパンの練習では同じ組で回る打撃練習、一塁でのノックの際にも常に一緒の時間を過ごし、多くを語らなくても分かり合えている。中村の存在そのものが良き精神安定剤になっていると言ってもいい。

「何番でもチームに貢献できればいい。前回(13年WBC)3連覇に貢献できなかったので勝ちにこだわりたい」という6番・中田に安定をもたらすおかわり先輩の存在が、プレミア12を勝ち抜く侍ジャパンの肝なのかもしれない。