【前田幸長 直球勝負】ヤクルト・真中満監督(44)が日本シリーズ第3戦でようやく初白星を挙げた。

 敵地のヤフオクドームでは2戦連続の完敗。報道陣の前では決して弱気な姿勢を見せていなかったそうだが、果たして本音はどうなのか。同級生の私としてはどうしても気にかかり、第3戦の試合前に訪ねた。

「大変だね」。私がそう声を掛けると真中監督は「どうしようもないね。手も足も出なかった」と苦笑して振り返った。第1戦は武田に4安打。第2戦はバンデンハークにわずか3安打に封じ込まれた。チャンスらしいチャンスもない。「策もなかった。完璧にやられた。どうしようもない」

 あれだけいい投球をされたら仕方がないと考えているのだろう。ただ言葉の端々にはソフトバンクとの力の違いを認めているところもあった。「うちは代わりの人間がいない。(スタメンも)比屋根と上田を代えるくらい。下位打線もいじることができない。でも、向こうはウッチー(内川)がいなくても福田、長谷川がいるからね」

 では、この追い詰められた状況をどう打破しようと考えているのか。私は「秘策は?」と聞いてみた。その答えは「ない」だった。「あったら教えてくれよ。あったら最初からやってるって」。同級生の気安さからジョーク交じりに話していたが、打つ手がないのは本音なのかもしれない。

 景気のいい話はひとつも聞けなかった。だが、決して諦めているわけでもなかった。反撃のきっかけに、とひそかに期待をしているのが本拠地の神宮球場という地の利。「ここのマウンドは投げにくいという投手は多いからね」と真中監督はつぶやいた。

 神宮球場のマウンドは踏み出す場所が高い。少しは改善されたそうだが、それでも他の球場に比べ、平らに近い形状になっている。このマウンドは私も苦手だった。今年のソフトバンクは神宮球場で交流戦を行っていない。慣れていないソフトバンクの投手が対応できないのでは、との期待があったのだろう。

 さらに真中監督は何度も「うちは打つしかない」とも繰り返した。打って勝ってきたチーム。川端を2番に起用したのもそもそもは点を取るため。狭い神宮球場で打ち勝つ。勝つにはその一点しかないと開き直っているようだった。

 第3戦はその狙い通り、本拠地の地の利を生かし、山田の3本塁打と畠山の本塁打などで打ち勝った。ただ1勝したとはいえヤクルトの劣勢は変わらない。ヤクルトは川端、山田、畠山で点を取ってきたチーム。ソフトバンクと良い勝負に持っていくためには川端の復調が鍵となりそうだ。 (本紙評論家)