早くも決戦のゴングは鳴った。24日開幕の日本シリーズに先駆け、23日に監督会議が行われた。かねて予告先発に否定的だったヤクルトの真中満監督(44)に対して、ソフトバンクの工藤公康監督(52)はジャンケンでの解決を提案。この“ジャブ”はかわされ、予告先発は行われないことになったが、鷹サイドは余裕しゃくしゃく。2年連続日本一に向け、自信をみなぎらせている。

 シリーズ前哨戦で仕掛けたのは工藤監督だった。監督会議で「予告先発を取り入れたいのですが」と提案。真中監督に「チーム方針で、できれば公表したくない」と拒絶されると「ジャンケンしましょうか」と応酬して笑みを浮かべた。

 日本シリーズが予告先発になるのは、両軍が合意した場合のみになる。ただ、ヤクルト側は「うちはメンバー構成上しないほうが得策。相手は(先発に)右しかいないが、こっちは左もいる」(真中監督)との考え。首をタテに振らせることはできずに“ジャンケン作戦”は失敗した。もっとも、前哨戦に黒星かというと、そうではない。鷹サイドとしては意に介さずだ。

 主力選手の一人は「2011年の日本シリーズでも(予告先発)なしで(右の)吉見が来ると言われていた中で(左の)チェンが来た。そっちのほうが、やってるほうは楽しみがある」。チーム関係者も「うちとしては、なしならなしで構わない。それは監督だって同じ。うちは選手層が厚いと思っているし、奇襲してくるとすればあっちだろうから、あえていえば、お互い分かってのほうが、より確実というのがあるくらい」と余裕しゃくしゃくだ。

 工藤監督にしても相手指揮官が“予告NG”を徹底することは百も承知。ただ、今やファンサービスとしてセ・パ両リーグのシーズン全試合で行われている。それだけに「なぜ?」との思いがあり「言うだけでも言ってみては?」との球団関係者の助言もあったことから発言したというのが事実だ。

 何よりも“ジャンケン提案”が余裕の表れだった。「こういうのはジャンケンに限るだろ」と話してニヤリ。「(相手先発の)予想を外すかもしれないけど、うちの左打者は左も打っているしね。実際のところ左だろうが右だろうが関係ないよ」とホンネを明かした。

 前日のドラフト会議でハズレを当たりと間違えてガッツポーズした真中監督とは対照的に、3分の1の当たりくじを見事に引き当てて、高橋純平(県岐阜商)の交渉権を獲得した工藤監督。お手並み拝見とばかりの先制ジャブをかわされたものの余裕だ。