プロ野球のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージが14日、両リーグともに開幕。セはリーグ2位の巨人が同1位のヤクルトに4―1で快勝し、アドバンテージを含め1勝1敗のタイとした。この試合のポイントを、前ヤクルト・バッティングアドバイザーの伊勢孝夫氏はどう見たのか。勝敗を分けた「真中采配」と「原采配」とは――。

 これまで何度も修羅場をくぐってきた巨人の原監督と、若い真中監督の経験の差がくっきりと出た試合になった。

 巨人は5回に坂本の2ランで2―1と逆転。その裏、二死一塁で打席に山田を迎えた場面で原監督は、粘り強く好投していた内海から右の田原誠にスパッと代えた。わざわざ代える必要はなかったと思う人もいるかもしれない。しかし、山田にもしもヒットが出れば、畠山、バレンティンと右の強打者につながる。相手に流れを与えないためにも、一気に代えてしまったほうが得策。いい決断だったと思う。

 ヤクルトは6回からロマンを起用した。しかし、あそこは秋吉のほうが良かったんじゃないかと思う。打順は6番の村田から。1人でも走者を出せば9番に回る。そうなったときにメンバーを見れば、左のアンダーソンが代打に出てくることは予想ができる。でも、ロマンでは左投手にスイッチはしづらい。それはオンドルセクにもバーネットにも言えること。秋吉であれば、左の久古なりを起用できた。結果はロマンが代打のアンダーソンに右前2点適時打を浴び、点差を広げられた。久古が投げたからといって結果がどうなったかはわからない。ただ、ベンチがそこまで計算していたかどうか。秋吉ならば展開も違っていたかもしれない。

 内海はいいころに戻ってきた。140キロを超えるボールもあったし、外中心で時折インサイドも見せる自身のいいときの特長を出せた。

 石川は5回一死二塁で3ボール1ストライクから坂本に本塁打を浴びたが、あそこは歩かせていい場面だった。続く打者の阿部が、そこまで2安打していたから確かに気持ちが悪い。でも右と左ならば左打者のほうが打ち取る可能性が高い。それでも打たれるのは仕方ない。それに坂本に本塁打されたボール。シンカーが高めに浮いたのはいただけない。短期決戦は1球のコントロールミスが敗戦につながる。

 1勝1敗の五分だが、ヤクルトは阿部に4安打されたことが厄介だ。何だかんだ言っても巨人打線の柱は阿部。阿部が打てば打線が勢いづく。今後の戦いに影響しそうだ。それにバレンティンが良くない。60本打ったときに比べ、間がないし、上体がかがみ過ぎ。早急に手立てを講じる必要がある。

(前ヤクルトバッティングアドバイザー)