【大下剛史の熱血球論】広島は負けるべくして負けた。3年連続となるクライマックスシリーズ進出がかかった7日の中日戦(マツダスタジアム)で1安打零敗。弱さと課題がハッキリと出た。

 象徴的だったのが、8回に2番手で登板し、8球でKOされてベンチで大粒の涙をこぼしていた大瀬良だ。チームメートは何とか勝とうと必死で戦っているのに、ベンチでめそめそと泣いている選手がいたら士気だって下がる。見ていて腹が立って仕方なかった。あの場面で「泣くなら一人でロッカールームで泣け」と言ってやれるコーチがいないのも情けない。

 高校野球なら負けて悔し涙を流す選手も絵になる。ただ、ここはプロの世界だ。1975年の初優勝時に山本浩二が涙を流したが、それは勝った喜び、プレッシャーから解放されるうれしさからわき出た涙だった。だからこそ、人々の感動を呼んだ。あの精神的な甘さを克服しないことには、大瀬良の選手生命にも関わる。

 野手陣も課題を露呈した。中日の大野、若松の投球も見事だったが、打球が前に飛ばないのは練習不足が原因だ。今年はシーズン序盤から大混戦で、終盤勝負になることは分かっていた。それなのに、その勝負どころで力が出せない。かつて広島の練習量は12球団一と言われていたが、今ではキャンプでもヤクルトなどに比べて振り込みが足りない。守備練習にしてもそうだ。

 8回の失点は無死一塁からの森野の二ゴロを二塁手の菊池がファンブルしたことから始まった。あのシーンでも、あと一歩前に出ていれば併殺を奪うことは可能だった。横の動きは一級品でも、前に出られないのはノックが足りない証拠だ。

 昨年は「カープ女子」が流行語に選ばれ、今年もたくさんのカープファンが球場に足を運んだ。ただ、このままでは一過性のブームになってしまう。緒方監督をはじめとした現場の首脳陣だけでなく、フロントも含めて今年の敗因、負けた悔しさをどう受け止めるか。来季に向けた戦いは、もう始まっている。

(本紙専属評論家)