真中満監督(44)率いるヤクルトが27日の巨人戦(東京ドーム)を2―1で制し、ついにマジック3が点灯した。2年連続最下位から2001年以来、14年ぶりのセ制覇にひた走る裏には“真中流”人心掌握術があった。

 1点リードの9回、ヤクルトの守護神バーネットが巨人最後の打者・立岡を空振り三振に打ち取ると真中監督はベンチで大きくうなずいた。天王山の2連戦を1勝1敗で終え、ついに優勝マジック3が点灯。それでも指揮官は「ひやひやした。集中して最後まで守れた。マジック3は先があるので1つずつ同じ気持ちでいく」とあくまで冷静だった。

 12球団最年少44歳の指揮官は2011年から二軍監督を3年間務め、14年に一軍チーフ打撃コーチに就任。満を持して今年から一軍監督となり、2年連続最下位に甘んじていた選手のやる気を最大限に引き出し躍進させたが、指導の秘訣は“何もしない”ことだという。真中監督をよく知るヤクルト関係者は「二軍監督時代も真中監督はすべてをコーチに任せていた。今も作戦は三木(肇・作戦兼内野守備走塁)コーチにすべて任せているし、投手は高津(臣吾)コーチ。コーチがやりやすい場を作るのが真中流」と明かした。

 この日の試合前も真中監督はミーティングをコーチに任せ、ナインの前には立たなかった。「監督があまり話すと選手を余計に追い込む。ほどほどにしないと。追い詰めない方がいい。ボクが大事なゲームだと言わなくても選手が分かっている」と真中監督は理由を説明した。

 実際、選手は最大限の力を発揮。先発のベテラン左腕・石川雅規投手(35)はこの日、5回1失点で13勝目。6回からは秋吉、ロマン、久古、オンドルセク、バーネットと細かい継投で逃げ切った。

 中4日に加え前日から発熱に苦しんだ石川は「去年の最下位は投手で負けたと言われキャンプで投手陣と“今年は投手で勝とう”と話していた」と昨季のセ・ワーストとなるチーム防御率4・62、717失点の悔しさが今季の躍進につながっているという。今季はここまでチーム防御率3・29と投手陣の踏ん張りは数字に出ている。

“真中流”気遣いは報道陣へのコメントにもにじみ出ている。新聞、テレビなどで本人に伝わることを危惧し、選手の批判は絶対にしない。話の流れで批判めいた言葉となった時も「今のは冗談だけど」としっかりと取り消して記事にならないようにしている。すべては選手のやる気を損なわないためだ。

 自分が目立つことなくコーチ、選手に一任することでやる気を引き出す。“真中流”の人心掌握術によって、ヤクルトの14年ぶりのVはいよいよ手の届くところまで来ている。