巨人が11日の中日戦(バンテリン)に6―1で勝利し連勝。ここまで打撃好調の中田翔内野手(33)が第91代4番に座ると、先制適時打を放って勝利に大きく貢献した。それでも中田は「4番は和真の席なんで、和真が戻ってくるまでみんなでカバーしながらやっていくことだけです」とあくまで「代役」であることを強調。ここまで4番の座を守ってきた岡本和を気遣う一言にも見てとれるが、この発言に隠された大砲の真意とは――。

 球場がどよめいた。試合前に「4番・一塁、中田」がコールされると、巨人ファンだけでなくバンテリンドームの竜党からも驚き交じりの歓声。なかなか長いトンネルから抜け出せずにいた主砲の岡本和と入れ替わる形で、打撃好調の中田が4番に座った。

 序盤から大役を果たした。初回二死三塁でこの日1打席目を迎え、相手先発・松葉の投じた128キロのチェンジアップをうまくはじき返してセンターへ。先制適時打で主導権を奪った。安打こそこの1本に終わったが、守備でも好守を連発して存在感を発揮。移籍後では初、自身にとって2021年6月8日の阪神戦(札幌ドーム)以来となる429日ぶりの4番も難なくこなしてチームの勝利につなげた。

 それでも、原監督が「(初回の攻撃の)流れは良かったですね。(好守備も)非常に存在感がありますね」と大砲をたたえる一方で、当の中田本人は「4番は和真の席なんで、和真が戻ってくるまでみんなでカバーしながらやっていくことだけです」と、あくまで「代役」であることを強調。後輩スラッガーへのリスペクトが含まれた言葉でもあるが、その裏には先輩としての意地も含まれていた。

 日本ハム時代には不動の4番として打線の中軸を担っていた。在籍時終盤には未来の大砲候補として清宮が入団し、将来的な「4番争い」にも期待が高まった。注目が集まる一方、2020年には自身3度目となる打点王のタイトルを獲得した中で、清宮は7本塁打22打点の打率1割9分と伸び悩んだ。

 そんな悩める後輩に対し中田は「今年に関しては相手にならないというか、眼中にもないっていう感じ」とバッサリ。ただ、これは期待の裏返しで「最終的には清宮が、このチームの看板選手として引っ張っていかないといけない存在になると思う。清宮には、そういう選手になってほしい。それだけすごい選手なので、誰がどうみても。世間の評価はすごく低いのかもしれないけど、今後の活躍を応援してもらいたい」と熱い思いも口にしていた。

 日本ハム関係者は当時「彼は実力で4番の座を守ってきた。裏を返せば、清宮には『実力で4番の座を奪いに来てほしい』、『簡単には譲らない』との中田なりの強い思いも込められていた」。実際にこの日の中田も「4番はチームの勝敗を分けるところなので、うまくいかなければ4番を外されることもありました。でもそこは自分を信じてやるしかないので、これまでも自分を信じてやってきました」と、自らのポリシーについて明かしていた。

 岡本和に向けられた中田の発言も、生え抜き大砲への気遣いとともに、先輩スラッガーとしての負けん気とプライドが隠されている。