巨人が14日の阪神戦(甲子園)に0―3と完敗。悪夢の2戦連続零封負けを喫し、とうとう借金生活に突入した。そんな中で注目されたのが、この日は出番なしに終わった中田翔内野手(33)。「6番・一塁」で先発出場した前日13日の同カードでは、タイムリーエラーを犯して2回途中に〝電撃交代〟でベンチへ…。「懲罰交代か?」など、G党の間でも大きな話題を呼ぶ交代劇となったことでこの日の様子が心配されていた。


 虎の若き左腕にまたしてもやられた。相手先発・伊藤将を前に打線は序盤から四苦八苦。得点圏まで走者を進めたイニングは2度のみ、三塁は一度も踏ませてもらえない快投を許し、5月22日の前回対戦(甲子園)に続き2試合連続完封負けの屈辱…。7回途中3失点と力投した先発・シューメーカーを見殺しにした。原監督も「まずはやっぱり攻撃陣が(しっかり)しないといけませんね。つながりも含めて、つながってこないとね」と嘆くしかなかった。

 そんな試合の裏で注目されていたのが、前日の試合の序盤に失策を記録し、スピード交代を告げられた中田だ。0―3の2回一死二、三塁の場面で、中田は近本の一ゴロを適時失策。その直後のタイミングで先発・メルセデスと合わせて〝電撃交代〟となった。

 一見「懲罰」ともとられかねない采配だが、この交代には2番手投手に長いイニングを投げさせるという意味もある。とはいえ、結果的に中田にとっては移籍後初となる先発出場時の1打席のみでの交代を経験する、歯がゆい結果に終わった。それでも、一夜明けたこの日の立ち振る舞いが自身の株価を急上昇させることとなった。

 それは試合前の室内練習場での出来事。打撃練習を終えた中田はファーストミットを持ち、手首の動きや捕球の感覚をしきりに確認。実松コーチに志願して個別練習を始めると、一塁ベース手前でのワンバウンドの打球を処理する練習を何度も繰り返し、体に動きを叩き込ませていた。

 特守終了後も納得がいかなかったのか、最後はキャッチボールを再度行うなど、前夜の失態を取り戻すかのようにひたすらに反復練習をこなした。

 ふてくされることなく見せた真摯な姿勢に、中田をよく知る関係者は「日本ハム在籍時の昨年には、不振のストレスからベンチでバットを放り投げ、跳ね返ったバットが顔に直撃してケガをしたこともあった。恩師の栗山さんの下では気持ちのままに動いても多少は目をつむってもらっていましたが、巨人では〝大将〟のままではいられない。自分自身のマインドをどうコントロールして翌日以降につなげられるかが課題になってくるが、話を聞く限り今はそれができているのではないでしょうか」と評価する。

 別の関係者も「あの交代は相当悔しかったはず。それでも歯を食いしばって改善に取り組んでいるということは、自分自身の中で何か一つ殻を破れた証拠なのでは」と称賛した。

 屈辱的な交代にも腐ることなく、自らの課題に黙々と取り組む――。〝脱・大将〟の姿勢は、さらなる成長への予兆かもしれない。