巨人が、楽天を電撃退団した田代富雄前打撃コーチ(61)に熱視線を送っている。一見、何の関係性もない両者だが、実は田代氏は不振にあえぐ村田修一内野手(34)の師匠にあたる存在。それだけに“専任コーチ”として待望論が持ち上がっているのだが、それだけではない事情もあるという――。

 5連勝で迎えた2日の中日戦(東京ドーム)は、3年目右腕・若松にプロ初完封勝利を献上。“初モノ”への弱さを露呈しただけでなく、打撃不振が完全に解消されていないことも浮き彫りになった。

 前日は上機嫌だった原辰徳監督(57)も「野球は点取りゲーム。0点じゃ話にならないもんね」とイラ立ちを隠せない様子だったが、そんな折も折、チーム内ではこんな声が上がっていた。

「田代さんが辞任した直後から、現場では『田代さんを狙ってはどうか』という声が出ている。田代さんが育てた選手は多いし“腕”は確かだから」

 現場だけではない。「フロントも田代さんの動向は気にしている。(退団した)事情は耳にしているし、今すぐどうこうじゃないにしても、ポストはいくらでも作れるわけだから」(球団関係者)と、何らかのポストでの招聘も視野に入れているというのだ。

 巨人と田代氏を結びつける存在が村田だ。この日の試合でも1安打を放ち5試合連続安打としたものの、打率2割3分7厘、6本塁打、17打点。本人も“野球人生で一番の壁”と認めるほどの大不振に直面している。そんな村田が横浜(現DeNA)時代から師匠と仰ぐのが田代氏だ。

 今でも師弟関係は続いている。今回の退団劇を耳にした村田は「つい1週間前にも電話で話したんですけど、辞めるとはまったく言ってなかったので…。近々電話してみます」と心配そうに語っていた。

 チーム関係者は「田代さんには近況報告だけでなく打撃に関してアドバイスを求めることもたびたびあったようです」と明かす。村田再生の切り札としての期待が田代氏というわけだが待望論が持ち上がった背景にはこんなチーム事情もある。

「ファームの底上げ、スラッガー育成です。二軍には内田さん(打撃コーチ)という名コーチがいますが、ご自身が左打者だったこともあり、どちらかというと左打者の育成に強い印象がある。さらなる底上げを目指すなら内田さんを左専門、田代さんを右専門という形でもいい」(別の関係者)

 1日に二軍でようやくプロ初本塁打を放ったドラフト1位ルーキー・岡本も右打者だ。一日も早い若き長距離砲の成長に、田代氏の招聘はうってつけではある。

 7月30日に電撃退団したばかりで、田代氏招聘に動くことが明らかになった球団は今のところない。果たして巨人が動くことはあるのか。