「もう少し早くチャンスを与えていたら、本人もチーム成績も変わっていたのではないか…」

 日本ハム周辺でこんな声が漏れ始めている。チームが最下位に低迷する中、松本剛外野手(28)が「孤軍奮闘」を続けているからだ。

 今季プロ11年目の中堅選手はシーズン開幕直後から打撃が好調。3、4月で打率4割1分8厘をマークすると、5月の月間打率も3割5分を維持。6月28日現在、3割5分1厘とハイアベレージをキープしている。

 昨季までの10年間での一軍通算打率は2割4分8厘。春先にはチーム周辺でも「これまでの実績から見ても好調は1か月続くかどうか。打率3割キープは最大でも2か月ぐらいではないか」との声が多数を占めていた。だが、そんな周囲の予想を裏切る躍進ぶりで、現在パ・リーグ打率部門では堂々の1位で2位のソフトバンク・今宮(3割1分9厘)を大きくリードしている。プロ11年目という遅咲きでのタイトルも夢ではない。

 こうなると噴出してくるのが「なぜこれまで使わなかったのか」との声だ。数年前から首脳陣が我慢強く起用し続けていれば、今ごろはリーグ屈指の安打製造機に成長していたかもしれない。19年シーズンから3年連続Bクラスに沈む日本ハムの順位にも影響を及ぼしたはず。そんな思いがあるからこそ、松本剛が打てば打つほど「もう少し早く彼の才能に気づけていれば…」と周囲が嘆くのだろう。

 ある球団関係者は「松本に才能があるのは周囲も理解していたはず」と前置きしながらこう話す。

「彼は高卒(帝京高)とはいえドラフト2位でプロ入りしただけに逸材であることは間違いない。ただ、ここ数年の日本ハムの外野陣は故障離脱を除けば近藤、西川(現楽天)、大田(現DeNA)を中心に回っていましたからね。松本を含め他の外野手に十分な出場チャンスが与えられていたかと言えばそうではない。その点では球団も反省すべき。ただ、その反省の思いがあるからこそ球団は今季ビッグボスを指揮官に据え、一度先入観を取り払ったうえで全選手に均等に出場機会を与え続けている。そのやり方を実践したからこそ、松本の才能が見直され開花したはず。悪いことばかりではないでしょう」

 28日の西武戦でも2安打を放ちこれで6試合連続安打。もちろん球宴初出場も濃厚だ。この勢いはどこまで続くのか。