まだまだ終われない。2位・巨人は23日のDeNA戦(東京ドーム)に5―7で敗れ、4カード連続の負け越しを喫した。首位のヤクルトが勝利したため、今季最大の10ゲーム差にまで拡大。いよいよツバメの姿もかすんできたが、主将・坂本勇人内野手(33)が垣間見せた〝キレっぷり〟が、逆転Vへの呼び水となる可能性を秘めている。

 序盤の大量失点がすべてだった。先発した新人の赤星が4回5失点でKOされ、2番手の戸田も6回に2点を献上。7点ビハインドの展開から6回に4点を返すなど2点差まで追い上げたが、奇跡は起こせなかった。

 試合後の原監督は「若い選手ですからね。育てるにはわれわれもどこかに辛抱が必要だし、彼ら若い選手たちもそこで奮起というかね。そういうものは必要となってきますね」。赤星らを必要以上に責めることはなかった。

 リーグ戦再開後、下位チームの中日とDeNAに痛恨の負け越し。ヤクルトの独走に歯止めをかけられずにいる一方で、シーズンは折り返したばかりでもある。その差は小さくないが、この日の試合では逆転Vへ〝光明〟も差した。それは、普段はクールな坂本があからさまに感情をムキだしにした点だ。

 その場面は3連打で1点を返して2点差まで追い上げ、なおも一死一、二塁で迎えた7回の第4打席だった。本拠地も押せ押せムードに包まれた中、坂本はカウント1―2から外角への146キロ直球を悠然と見送った。ボール球と確信したわけだが、判定はストライク。見逃し三振に倒れた直後、坂本はあっけに取られた表情を浮かべ、球審にこう確認した。

「えっ、ストライク?」

 ここから一気に不服そうな態度に豹変。いかにも不満そうに球審の前をユラユラと横切り始め、通常よりもゆっくりとしたペースでベンチへ戻り、その後も何事かをブツブツとつぶやき続けた。

 ナインと喜びを分かち合う笑顔を見せることは多いが、ここまで露骨に怒りの感情をあらわにすることは極めてマレだ。しかし、実は以前からチームの顔である主将にこうした〝熱さ〟を求める声もあった。

「もちろん(坂本)勇人は立派なキャプテンなんだけど、あえて言うなら喜怒哀楽をもっと出してほしいんだよね。三振してもいつも淡々としていて、悔しくないのか? と思うことが何度もあった。時には感情を表に出したっていいんだよ。なぜなら、選手はみんな勇人を見ているから。勇人が悔しがれば〝あの勇人さんだって悔しがっているんだから、俺たちもやるぞ〟となる」(球団幹部)

 もっとも、スポーツの世界でルールを逸脱することは許されない。退場になっては元も子もないが、チームに及ぼす影響力が絶大なことは間違いない。この日は大量失点で反撃も及ばなかったが、24日からはヤクルトと3連戦。背番号6の闘志が消えない限り、今後はまだどうなるか分からない。