スピードスター候補の〝扇風機化〟に危険シグナルが点滅している。西武・若林楽人外野手(25)は5月31日の阪神戦(甲子園)で1年ぶりの戦列復帰。交流戦10試合に出場して打率2割7分、2打点、2盗塁の成績を残した。

 本拠地復帰戦となった6月7日の巨人戦(ベルーナ)では二死満塁の第4打席で値千金の逆転2点決勝タイムリーを放ち、「本当に苦しいことばかりだったけど、感謝する人が多く、ここに立ててうれしい」とお立ち台からファンに復帰報告をした。

 もちろん、左ヒザ十字靭帯損傷の大ケガを思えば、復帰した今も〝リハビリ〟の一過程であることに変わりない。若林本人が「ヒザ(の状態)が100%になるにはあと1年かかる」というように、トレーナーや首脳陣の配慮の中で今後も慎重な出場が続いていく。

 一方で「リードオフマン」として戦列に復帰した若林の現実的な課題は打席での確実性。ここまで37打数で17三振はいただけない。とりわけ本拠地・ベルーナドームでの5試合16打数で10三振は一番打者としては失格だ。

 リハビリ開始から二軍での調整期間中、若林が模索してきた打力強化は4本塁打という形になって表れたが、一軍投手相手には大振りばかりが目立っている。それでも本人は「打ち勝つ野球が大事だと思うので…」と、新たなスタイルにこだわりを見せる。しかし、相手バッテリーの目線に立てば、わずか44試合で20盗塁を決めた韋駄天に塁上でウロチョロされるのが一番の厄介事だ。

 チャンスメーカーとして戦列復帰した以上、優先されるのはチームの得点機をいかに作り出していくか。多すぎる三振を減らし、まだ一つしかない四球を選んで塁上から相手バッテリーにプレッシャーをかけ続けることが明確な若林のテーマなのだが……。