鷹のラスボスの「力の源」は――。ソフトバンクのリバン・モイネロ投手(26)が新守護神としての貫禄を見せ始めている。4月に絶対的クローザーだった森の二軍再調整に伴い「8回の男」から転身。防御率0・83、奪三振率14・54を誇り、相手に「絶望感」を与える投球を続けている。

 今季ここまでの自身の投球を「コースに投げられているし、ボールも走っている。コントロールが改善できているという実感がある」と振り返ると、その要因を次のように説明した。「これまで以上に『もっと繊細なコントロール』というのを意識して投げているんだ。それで(意図通りに)フライを打たせたり、ゴロを打たせたりできている」。真っすぐ、スライダー、カーブ、チェンジアップの精度がさらにアップ。すべての球種が決め球で、苦しい場面で簡単にストライクが取れる。打者目線で言えば、まさにお手上げ状態。ここまで圧倒的な数字を叩き出しているのもうなずける。

 長らく鷹の「守護神」の座には森が君臨してきた。不慣れな「9回」も慣れれば、今のモイネロに重圧がかかることはないようだ。「8回も9回も違いは特に感じない。時間的に遅くいくか、早くいくかってだけだよ」。頼もしい左腕がかねて大事にしているのがエンジョイ精神。「いつも楽しむことを心掛けている。今は9回に投げることを楽しめているよ」。どんな時もマウンドでひょうひょうと投げる姿はモットー通りだ。

 異国で戦う左腕を後押ししているものもある。「子供たちが自分が投げるイニングは(集中して)見てくれているんだ」。キューバに残してきた愛妻と長男、長女が出番になるとテレビの前に集合。その時だけはくぎ付けになって声援を送っているという。これも〝日本で戦う父ちゃん〟の無双ぶりの秘密だ。

 お気に入りの福岡ライフも、コロナ禍の影響で近所のスーパーに夕飯の買い出しに行く程度。それでもキューバの野球小僧は、職場であるマウンドを遊び場のように楽しんでいる。これからもモイネロが出てきたら、相手はおしまいだ。