大砲の〝呪縛〟は解けるのか。巨人は12日の楽天戦(楽天生命)に2―9の大敗を喫し、交流戦は8勝10敗の10位で終了した。セでは首位・ヤクルトと今季最大7ゲーム差の2位。17日のリーグ戦再開からの巻き返しが求められるが、そのキーマンの一人が二軍で再調整中の中田翔内野手(33)だ。二軍では無双状態、一軍では別人のように当たりが止まるスパイラルの要因を巡り、諸説飛び交っている。

 試合は早々と決まった。先発した山崎伊が2回途中5失点でプロ最短KO。勢いづいた楽天打線に2番手の鍵谷ものみ込まれて一挙に9点を失い、反撃も焼け石に水となった。試合後、原監督は「先発ピッチャーの責任というのは重いもの。いい経験にしてもらわないといけませんね」と右腕に自戒を求め、負け越しに終わった交流戦について「残念ながら…という結果になってしまったんですけどね。まだ(シーズンの)途中ですから。少し調整、矯正してまたペナントレースを戦っていきます」と切り替えを強調した。

 試合が行われた仙台から遠く離れたジャイアンツ球場ではこの日、長嶋茂雄終身名誉監督(86)がジャイアンツ球場を電撃訪問。二軍再調整中の中田を直々に打撃指導した。中田は二軍落ちした昨年9月にも「心配して駆けつけた」とミスターから異例の直接指導を受けたが、2度目はまさに異例中の異例だ。今季は41試合で打率2割1分5厘、5本塁打、20打点の成績。一塁では高卒4年目の増田陸が芽を出し、中田は打席不振も相まって6日に2度目の二軍降格となっていた。

 ただ、難解なのは中田は二軍戦で本塁打を量産するなど大爆発するが、一軍に復帰するとなかなか好調が続かない点だ。二軍で打ちまくればファームに留め置く理由もない。ただ、一軍では首脳陣の期待に応える結果を残せず、抹消と昇格を繰り返すサイクルが続いている。その原因はどこにあるのか…。

 チームスタッフの間には「もともと打率が高い選手ではないからね」との声もある。昨季までの通算打率は2割4分8厘。2019年から4年連続で下回っているものの、大差はなく〝通常運転〟という。

 その一方で、巨人2年目の中田が原監督の不文律である「実力至上主義」に順応しきれていないとの見方もあった。

「日本ハムでは簡単に抹消されることはなかっただろうけど、ウチではすぐに二軍に落とされる。だから落とされまいと力みにつながっていることもあるんじゃないか」(チーム関係者)

 ミスターの手ほどきを受けた中田は、この日の二軍戦で6号ソロを含む3打数1安打1打点。今回の二軍降格後も4試合で打率3割6分4厘(11打数4安打)、2本塁打、4打点とやはり当たりは続いている。しかし、肝心なのは一軍に昇格した後だ。中田は早ければ、リーグ戦が再開する17日の中日戦(バンテリン)から再登録が可能となる。最強レジェンドからパワーを注入された大砲は、今度こそ定着できるか――。