特効薬がないからこそ、本人も周囲も苦しい。ソフトバンク・柳田悠岐外野手(33)がなかなか不振から抜け出せない。10日のヤクルト戦(ペイペイ)は3打数1安打、1四球ながら本来の打撃にはほど遠かった。交流戦に入って打率2割2分2厘、0本塁打、6打点。この間の長打はわずか1本で、先月31日には1試合5三振を喫するなど異常事態が続いている。

 この日の試合前には、実に9年ぶりとなる早出特打を行った。打撃コーチからの提案を受ける形で自ら参加を希望。もがき苦しむ主砲の姿に、藤本監督も「状態を上げるにはもう練習しかない」と一心不乱にバットを振ることに理解を示した。

 かねて柳田は「自分が打てずに負けたら、それは主軸である自分の責任」と言ってはばからない。この日、1―3で敗れたチームは望みを残していた交流戦Vの可能性が完全に消えた。なかなか波に乗れない戦いに責任を感じているはずだ。主将にして、絶対的主砲。ライバル球団の攻め方は、群を抜いて厳しい。柳田にしか分からない苦しみ、葛藤があるのだろう。

 周囲は悩める主砲に手を差し伸べる一方で、復活に不可欠な「心の平穏」を取り戻すべく、平時と変わらない周囲の見守り方をすすめる声もある。柳田の異例の早出特打に驚いた球団関係者の一人はこう言った。

「周りに心配をかけていることを肌身で感じながら毎日を過ごしていると思う。サポートが厚くなればなるほどに重圧が増しているんじゃないかと、気がかりだ」

 普段取らない行動は「あせり」の表れ。主砲を過度に追い詰めない空気づくりを…というのも一理ある。

 チームは現在パ・リーグ首位に立つが、まだまだ先は長い。主砲の復活を待ちたい。