二軍で腐らず、代打屋稼業を経て「4番」に戻ってきた。ソフトバンクのアルフレド・デスパイネ外野手(35)が9日の阪神戦(ペイペイ)で今季初めて4番でスタメン出場。2号ソロを放つなど貫録を見せ、チームの4―0の勝利に貢献した。

 ハイライトは3―0の5回。昨季まで同僚だった変則左腕・渡辺の真っすぐを左中間席中段に運ぶ特大の一発を叩き込んだ。「完璧な当たりで最高の気分だった」。この日は1打席目に痛烈な右前打を放つと、続く第2打席、さらには第4打席でも四球を選び全打席出塁。「起爆剤で4番」に起用した藤本監督の期待に応える活躍だった。

 直近3カード、9試合でチーム本塁打は2。デスパイネは3日の中日戦でも代打弾を放っており、自慢の長打力が鳴りを潜める打線にあって希望の光となっている。これ以上ない結果を残したキューバ砲は「これをきっかけに多くのホームランが出るようになればいい」と胸を張った。

 大砲の打棒が右肩上がりで復調してきた裏には、藤本流の操縦法があった。一軍打撃コーチ、二軍監督として指導歴の長い藤本監督は、多くの外国人選手と接してきた。「気分屋」が多い助っ人たちを、いかに「その気」にさせるかがカギであることを心得ている。今季、右足首の不調のため開幕をリハビリ組で迎えたデスパイネは、二軍での実戦過程でも気持ちの入った日々を過ごしているとは言い難かった。そんな助っ人に指揮官は4月中旬「交流戦前の一軍昇格」を念頭に調整するよう命じたメッセージを送っていた。

 かねて〝本気のデスパイネ〟を誰よりも買ってきた指揮官。シンプルに明確に要望を伝えることで「責任感」が芽生えることを知っていた。メッセージを受け取った後のデスパイネは二軍で状態を一気に上げ、一軍昇格後も代打稼業をまっとう。首脳陣の信頼を取り戻した。

 プライド高き「キューバの絶対的4番」が見せた復活の歩み。人心掌握にたけた指揮官が、貧打にあえぐ打線に救世主を生んだ。