ジョーカーであり続けるために――。パ・リーグ首位のソフトバンクを開幕から下支えしているのが、ユーティリティープレーヤーの牧原大成内野手(29)だ。三塁を中心に遊撃、二塁、中堅と内外野のいずれのポジションもハイレベルにこなす。規定打席には届いていないが、ここまで打率3割3分1厘、3本塁打、18打点。数字以上に試合の中で重要な一打を放つシーンも多く、主力に故障者が相次いだ中でチームを上位に押し上げてきた立役者と言える。

 先発出場試合に限れば18試合連続安打中で、交流戦に入ってからの成績は37打数16安打で、交流戦2位の打率4割3分2厘。これには「ジョーカー」と命名した藤本博史監督(58)も「今、神がかっているからね。交流戦MVPを狙いにいくぐらい頑張ってほしい」と〝タイトル獲得〟を期待する。

 一方で、指揮官は「当然、今まで1年間やったことないし、1年間あの状態で維持するためにはどこかで休ませないといけない。体がそんなに強くないし、疲れがすぐにたまるタイプだから」。

 ここまでチームの有事を埋める「ジョーカー」としてフル回転してきただけに、指揮官は交流戦での起用状況を「勤務超過」と認める。現状、各選手の疲労がたまっている状況。そんな中でも群を抜いてハイパフォーマンスを継続する牧原大に、藤本監督は「レギュラー以上の存在」と最敬礼した上で、注意深く体の状態を見極め主力の役割を託している。

 指揮官の厚い信頼を感じ取っているからこそ、牧原大はこう言う。「去年もこの時期にケガをしてしまったので、そこは自分の中でも休むじゃないけど、どこか張りがあったりしたら、それは素直に言うというのは〝絶対〟にしています」。

 レギュラーの座をつかめるチャンスならば、踏ん張りどころと見て無理をしがちだ。だが、藤本監督はどんな局面でもこなせる「ジョーカー」の存在がいかに貴重かを本人に説明済み。牧原大はその意義を理解し、誇りを持っているゆえに〝絶対申告〟を約束している。

 壊れない、壊さない。「結局、成績っていうのは(すべてが)終わってからの話。シーズンを通して、この成績を残せるように」。その口ぶりは、もはや達観している。